世直し

 言った、言っていない。

 そんなことを言い合いながら僕とアレイスは王城の方から王都へとやってきていた。


「まぁ、もうとりあえずは良いわ。とりあえず世直しの旅と行きましょう!」


「王都を少し散策するだけで旅とは如何」


「余計なことは言わなくて良いの!ほら、行くわよ!」


 不満を垂れる僕に対して、アレイスはノリノリで言葉を話す。

 そういえば、アレイスは何よりも正義を大事にする女だったか……僕と最も相性悪いじゃん。

 別に犯罪行為は積極的にしないけど、自分の利益の為なら他人を騙すことを厭わない子悪党が僕なのだが。


「……ふわぁ」


 僕はノリノリで進んでいくアレイスの後ろについて歩いている。


「おい、アレイス」


 だが、その途中で僕はちょっとだけ苛つきながら彼女へと声をかける。


「ん?何かしら?」


 世直しの旅。

 そういう言説では始まっておきながら、堂々と表の通りを歩いているアレイス……こんな表の通りで世直しとか出来るわけがない。

 行くならもっと、奥。裏路地とかであろう。


「世直しするならこっちに行くぞ。こんなところにいても意味はねぇよ」


「……というか、あれ?敬語」


「……行くぞ」


 僕はアレイスの代わりに自分が先導しながら裏路地の方へと進んでいく。


「こんな暗いところに人が


「どんだけ甘ちゃんやねん。こういうところに底辺の人間が蠢き、同じように犯罪者たちも蠢いているんだよ」


 日本ではこういうところが正に僕の根城であった。

 いくら、日本が法治国家で警察がどの国よりも公正で正常に存在しているからと言っても、こういう場所で行われる些細な犯罪を取り仕舞っていられるほど暇じゃないからな。


「……うっ」


 長らく体を洗っていない人間の臭気に放置されているゴミや死体の腐乱臭がキツくなっていくと共に僕は魔法で防臭しながら先に進んでいく。


「……誰か、いるのかしら?」


 僕は何の警戒もなしに歩いているアレイス共々周りからの認知を誤魔化す魔法を発動し、傍から見て二人に気付けないような工夫した状態で先へ先へと進んでいく。


「本当に誰かいるの?ねぇねぇ」


「ちょっと、黙ってて?」


 僕に縋りついて疑問の声を上げてくるアレイスに僕は黙るように告げる。


「ほら……一人、見えたから」


 僕は誰もいない路地裏で立ち止まるとそのまま右手を壁の方へと突き出す。


「がぼっ!?」


 それと共に確かにそこには誰もいなかったはずの場所に。

 男たちが現れ、僕の伸ばした右手に一人が捕まってそのまま壁にまで体を押し飛ばされて気絶する。


「やぁ、こんにちはぁ。何をしていたのかなぁ?とりあえず、全員一回ジャンプしてみようか」


 僕が使っているような魔法で周りから見つからないように工夫していた一団に対して、僕は笑みと共に声をかけるのだった。

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