アレイス
僕の前に立っているのはゲームのメインヒロインとして活躍する少女その人である。
画面の中だけの存在が今、僕の前に立っていた。
「気のせいじゃないですか?自分は何の反応も取っていませんよ?」
そんな彼女を前にして思わず漏らしてしまった『うげぇ』という本音。
それに対して強く反応を示したアインスに対して僕はしれっと堂々たる態度で誤魔化しに行く。
「えっ……いや、でもさっき確かに『んげぇ』と」
「いや、そんなこと言っていませんよ?何か、幻聴でも聞いたんじゃないですか?」
間違えているのは僕じゃない。お前の方だ。
そんな態度を僕は全面に押し出していく。
「え、えぇ……?私がおかしいのかなぁ?」
「お疲れなのですか?とりあえずはそちらの方におかけください。ひとまずは一息つかれた方がよいかと」
「……私ってば疲れているのかなぁ、座らせてもらうね」
堂々たる態度を一瞬たりとも崩すことのなかった僕は見事、アインスを雰囲気でゴリ押すことに成功した。
「「……」」
ちなみに祖父と国王陛下はこちらの方へと見ながら何だ、こいつという視線を送ってきている。
何とも失礼な視線である。
「それでは改めまして。自分はルガン・カエサル。カエサル家の嫡男であります」
「これはご丁寧にどうも。さっきも言ったけど、私はアインス。この国の第二王女ね。貴方は私の婚約者候補なのでしょう?よろしくしたいわね」
「……えぇ、その通りですね」
僕は笑顔で頷きながら、内心ではどうやって彼女のことを遠ざけようか頭を回す。
ゲームのヒロインと関わるなどまっぴらごめんである。自分の死亡フラグも立つし、何よりも面倒。
「……」
どーやってこの婚約話を破断させよう。
何処からか適当に自分の婚約者を作りにいくか?
「じゃあ、お爺様。私たちは二人で遊びに行っていいかしら?」
え?嫌だけど?
「おぉ、もちろん良いとも。若い者二人で楽しんでくると良い」
断れや、ボケ老人。
「それじゃあ、ルガン!私と共に王都を更に良いものにするため!私と共に悪いものをとっちめにいくわよ!」
「……んぇぇぇぇぇぇ」
僕はその言葉を聞くと同時に何とも言えない声を上げる。
これまではちゃんと本音を隠せていたのだが、流石に我慢出来るはずもない面倒くさそうな申し出に眉を顰めて声を漏らすことしか出来なかった。
「ねぇ、やっぱり貴方。私のことを見て『んげぇ』って言う反応したでしょ」
そして、そんな態度を僕が取ったせいで
「それじゃあ、行きましょうか」
そんな彼女のことを無視して僕はゆっくりと立ち上がる。
「あっ!?ま、待ちなさい!」
僕はアレイスと共に二人の老人を置いて応接室から出ていくのだった。
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