王都
祖父から聞いた婚約者についての話。
それを受けて僕はすぐに祖父と共にカエサル辺境伯領から王都の方へとやってきていた。
「……んっ、ここまで長かった」
「随分と安定した飛行魔法が可能ではないか」
辺境伯。
それは国境部の監視と防衛を行う最重要の役職であるからこそ、その座に就くものにはそれ相応の能力が求められる。
そして、それに伴って魔法のある世界だと強者であればあるほど移動能力も変わってくる。
僕と祖父も共に飛行魔法が使用可能であり、一日足らずで辺境から王都にまでくることもできる。
「さて、それで王都についたわけじゃが……もう今日のところは寝るだけじゃな」
既に太陽は沈みかけている。
ここから何かをすることはないだろう。
「そうだね」
「それで?宿の心配はいらぬ。王都の方にはわしらカエサル家が所有している屋敷があるのでな。そこを使えばいいだろう。飯はどうする?」
「んっ?勝手に食べているよ」
「むっ?そうか……わしであれば王都の美味いものの用意など簡単に出来るのじゃが」
「別に良いよ。移動中に至るところで買い食いしたものがまだお腹に残っているし」
ここに来るまでの道中で多くの場所に立ち寄って、現地の美味しいものを食べている。今、そこまでお腹がすいているわけでもない。
お腹がすいたら適当に屋台にでもよって満たせばいいだろう。
腹を満たすことよりも僕にはやることがあるのだ。
「じゃあ、自分はこちらに行くので。一旦それっきりで」
僕は笑顔で歓楽街の方を指差しながら告げ、そちらの方へと足を一歩踏み出す。
これから王都というレベルの高い女性が集まる歓楽街で欲望の限りを尽くすほうが重要である。
うちの領は殺伐とした辺境であり、レベルの高い女がいないから行くになれなかったんだよねぇー。
「待って、何処に行こうとするのじゃ」
だが、そんな僕を祖父は慌てて止めてくる。
「いや、普通に歓楽街だけど?言っていたじゃん。王都に来たら歓楽街行くって。好き放題するだけよ」
「……お主、仮にも明日。お主の婚約者になるかもしれない少女と顔合わせするのだぞ?そんな前日の夜に歓楽街は不味かろうて」
「……それが何か?別に政略結婚なのだしいいだろう。別に普段の屋敷の方でもレゾンと毎晩寝床を共にしているしな」
「……やっぱり、ダメじゃないか?こいつ」
「恋愛結婚するなら僕以上にクソな相手もいないと思うよ?」
僕は貴族としてぐーたら暮らしながら女を好き放題抱くことである。
そんな奴と恋愛結婚なんて、誰も望んでくることはないだろう。
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