婚約者
祖父の口から出てきた言葉。
「あぁ、そうじゃ。お主に誰を婚約者として紹介するのか、それを考えるための模擬戦じゃ。お主がどうしようもない奴であったら、そうやすやすと女を紹介出来ぬじゃろう?」
それは僕の婚約者に対する話題という衝撃の話だった。
「……僕に、婚約者。いや、まぁ、でもそうか」
普通、貴族の息子娘であれば若くしてから婚約者がいても何も不思議ではない。
自分よりも年が三倍近い相手に嫁がされる例もあるような、そんな悲しき貴族社会なのだ。
だから、別に僕が婚約者に関する話が来てもおかしくないだろう。
「昔、わしは同じ強大な敵と戦った旧友とその息子、娘が生まれたら互いに婚約させようという約束をしていたのだが……互いに男しか生まれなくてな。その約束は孫の世代にまで受け継がせたのだ」
「……はぁ」
些細な約束が理由で僕は婚約させられるのか?
「あぁ、心配しなくともその婚約は旨味も多い。相手もしっかりと良家だ」
「どこの家?」
「うぅむ……王家じゃな。わしの旧友ってのが現在の国王陛下じゃ」
「……思ったよりも上だった」
「であろう?格の高い家の者と婚約して悪いことはない。お相手もしっかり者だというしな」
「ふぅーん」
僕は祖父の言葉に対して生返事を返す。
「お主がまともな子ではなかったら、国王陛下に我が孫を推薦出来ないからな」
「なるほどね……ということは、相手の娘はまともな子だと?」
別に貴族間の結婚の場合、夫婦の間柄は冷めきって次世代を残すだけの関係になることも多々あり、面倒な相手だったら拒絶すればいいだけの話なので……あまり関係ないと言えば関係ないが、それでも出来るだけ良さげな子の方がいいよね。
「……まぁ、お相手はかなりのじゃじゃ馬らしく、面倒なこともあるかもしれないが」
「それなら別に良いよ、徹底的に遠ざけるし。政略結婚ならそこまで仲良くする必要もないでしょ」
「い、いやぁ……わしとしては仲良くしておいて欲しいのだが」
「単純に王家とカエサル家の仲を確固たるものにしておきたいって言う話でしょ?我が家の人間は全員強者だし」
「うぅむ……確かにそういう面がなくはないのだが」
「まぁ、細かな話は合ってからでしょ。それで?僕は祖父の審美眼的にはどうだったの?」
「うむ。わしら、カエサル家に求められるのは純粋な武力のみ。性格上はまま、こうして話していて問題はありそうであったが、実力は問題ない。婚約の話を進めてもいいじゃろう」
「なるほど。それじゃあ、お願いね」
「うむ、任せよ」
「出来れば顔合わせは王都で。僕は王都に行きたい。王都の歓楽街は豪華なのだろう?」
「……何を言っておるのじゃ」
僕と祖父が婚約者についての話をしていた中。
「ハッ!お待ちなさい!婚約なんて……まだ早いです!」
急に我を取り戻した母が話に割り込んでくる。
「あっ、母はあまり関わらなくていいよ」
「んなっ!?」
「話が進んだら教えて」
僕は一瞬でそんな母を斬り捨て、今いる談話室を後にするのだった。
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