一切の容赦なく叩き込んだ僕の手刀を受けて悶絶した祖父。

 そんな祖父は自分の母に引きずられる形で修練場から離れ、談話室の方へと連れてこられていた。

 ちなみに僕もついてこさせられた。


「一体、なんであんなことをしたのですか!?この子はまだ小さいのにいきなり木刀握らせて!」


「……いや、そ、そのじゃな……じゃってな」


「何ですか?」


「……うぅ」


「……」


 あの爺さん、あれだけ母のことを異国の女だとか侮蔑しまくっていたのにヒエラルキー負けているのかよ、たじたじじゃないか。


「……わしの孫の態度が急に変わり、本気の騎士との模擬戦にも勝利したというのではないか。ここはいっちょ、わしが試してみねば、と。ルガンにはあまりいい話もなかったことじゃしな」


「そんなことが理由だったのですか?」


「い、いやいや……そ、そんなこととは何じゃ、そんなこととは。重要なことなのじゃぞ?そもそも」


「なんですか!私の教育方針が駄目だとで」


「いや、ダメやろ」


 ここまで黙って聞いていた僕は母の言葉に割り込んで声を上げる。

 ちゃんと母の教育方針は駄目である。

 ついでにカエサル家の人間が行う教育がクソオブクソである。

 

 脳筋しかいないカエサル家の人間はてんで教育など出来ず、だからこそちゃんと教育を行える事情を知る国内の女を妻とするのが通例なのだが、そんなことを知らぬ女と父が恋愛結婚をしてしまった。

 しかも、その女が甘々で育児がまともに出来なかったので、大変なことになってしまっているのである。

 なので、ちゃんと祖父は正しいことしか言っていない。


「自分で言うのも何だけど、貴方の教育はダメダメだよ?純粋に甘やかしすぎだし、祖父から侮蔑されても仕方ないんじゃないかな?そんなことより祖父。結局、僕に何の用だったの?」


 そして、そのまま強引に話を進めていく。


「……あ、貴方」


「そ、祖父……うぅん、それじゃったな」


「簡潔に話を終わらせてね。僕は普通にちょっとだけ苛ついているから。急に模擬戦させられて」


「う、うぅむ……それに関してはすまなかった。だが、わしとしてもお主の状態を知りたかったのじゃ」


「普通に話しかけにきなよ」


「そ、そうしたかったのじゃが……孫にどう話しかければいいのか、わからなくてじゃな。自然と体が闘争を求めていたんじゃ」


「えぇ……まぁ、いいや。それで?なんでこんなことをしたの?」


「うぅむ……それはじゃな」


「……私の教育が、ダメダメ」


 僕は落ち込んで項垂れる母のことを無視して、祖父の話を聞くのだった。




「え?婚約者?」

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