模擬戦
今度、先に動いたのは僕ではなく祖父の方だった。
「……くっ」
すらりと体の動きが読みにくい動きと共にこちらの方へと迫ってくる祖父に対して僕は剣を合わせるのではなく後退で返す。
そんな僕を追いかけて祖父が更に速度を上げて迫ってくる。
「しッ!」
そして、祖父のギアが一つ上がったタイミングで僕は反転して祖父の方へと突撃していく。
互いに剣の間合いへと入る中で、先に手にある木刀を振り下ろしたのは僕だった。
「……は?」
だが、それは祖父の剣とぶつかると共に何の感触もなく、あっさりと吹き飛ばされる、僕の手元から……巻き技っ!?
にしても何の感触もなく木刀を飛ばすなんて出来るのかよ!
「終わりだ」
木刀を失った僕に対して祖父は容赦なくその手にある木刀を振り下ろす。
「せいっ!」
武器である木刀を失った……だが、この程度で諦める気など毛頭ない。
「うぉ?」
僕は祖父の袈裟斬りをしゃがんで避けると共にその腹へと蹴りを叩き込む……リーチがみじけぇ!全然深く刺さらなかった。
それでも、祖父が僕の蹴りで少し態勢を崩した隙を狙って僕はさらに踏み込んで距離を詰めていく。
「……ッ」
木刀の間合いを超えて、拳の間合いへ。
僕は自分の手足を振るい、木刀を手に持つ祖父を追い詰めていく。
「ぬっ」
拳を三発、蹴りを二発叩き込んだところで一度、木刀を手放した祖父に自分の拳を受け止められる。
「舐めるなっ!」
「……かるっ!?
そして、そのまま僕の軽い体を強引に持ち上げる……自分の身体が軽すぎてうまく踏ん張れなかった……ッ!
内心で焦る僕に対して、祖父はその軸足でもって一回転すると共に全力で僕のことを放り投げる。
「……ちぃ」
祖父の手によって宙を舞った僕は何とか地面に落ちる前に受け身の態勢を取って地面を転がると共に急いで立ち上がる。
「せぇぇぇいぃ!!!」
そして、地面へと足に地を付けた僕を狙って祖父が地面を蹴って迫ってくる。
「ふっ」
そんな祖父に対抗するように僕も地を蹴る。
拳と木刀ではリーチの差がある。
だが、最初の一撃さえ避けられれば……未だ、勝機は残っている。
僕は未だ勝利を諦めてなどいなかった。
互いに勝利を望んで地を蹴った僕と祖父が迫る───
「何をしているのですか!お父様!」
───そんなタイミングで修練場へと慌てて駆け込んできた僕の母の言葉が響き渡る。
「ぬぉ!?」
その母の言葉を聞いた祖父は反射的に動きを止めてしまう。
「……もらった」
そして、それに対して僕は一切動きを止めることはなかった。
「ぐぉ!?」
僕は一切の遠慮なく祖父の喉へと手刀を叩き込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます