第34話 異変②

昨日幸せだった時間と、鈴と連絡すら取れない今の状態に、不安な気持ちが大きくなってしまい、『なんでた?どうしてだ?』と思っても、どうにもできない、何もわからないこの状況に、心が耐えることが出来なくなり、涙となって現れた。

「お、おい、翔本当に大丈夫かよって‥‥大丈夫じゃないよな‥‥うーん、どうしたらいいんだ‥‥」

いきなり泣き出してしまった翔に、さすがの優も困惑してしまった。気休めのような慰めを言えるような状況ではないことを、優は瞬時に悟ったからだ。

移動した教室で行われる授業は、座席の場所が決まっておらず、授業内容もほとんど映像を見ているだけの授業になる。その為教室内はいつも薄暗い状態だ。泣いてる翔をうまく後ろの席へと連れていき、目立たないように2人並んで座った。とりあえず静かに授業を受けるようにした。『翔を1人でどこかへ行かせるのも心配だし、2人でサボってしまったら、2人がいないことをうまく誤魔化してくれる人がいない。とりあえず今はこれでうまくやり過ごすしかない』優ができる限りで考え出した最善の選択だった。

教室に着きほどなくすると、まだ授業始まりのチャイムが鳴っていないが、先生が来て黒板に「緊急職員会議の為、映像を観ているように」と書き、映像を再生して、教室を出ていった。優は心の中で『これは不幸中の幸いだ。さすがにこの授業の間に、翔も少しは落ち着いてくれるだろう』と、心の中で安堵した。そのまま優も何も言わずに、翔をそっとしておいた。翔も段々と心の整理ができてきたようで、少しずつ落ち着きを取り戻していった。

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