第12話 夜に。

雨の音が優しく夜を包む。

冷えた空気が少し肌寒い、春の夜。開け放った窓の、網戸の向こうから雨粒が飛び込み肌を濡らす。

頬を伝う水は雨だけではない。

それを拭いもせず、ただぼんやりと曇った空を見ていた。

星も月も見えない夜の、ただ暗く昏い空。


夜は嫌いだ。

静けさが街を飲み込んで、そうして、益体もない出鱈目で無秩序な想いばかりが頭を過る。

いっそ眠ってしまえば楽なのに、それもできずにぼんやりと空を見ている。

あといくつ、この夜を過ごせるだろうか。

そんな曖昧なことを思う。


独りぼっちで見上げる夜空に美しさの欠片も見出だせない。

けれど。

君と見た、数え切れない夜の美しい煌めきを、なんとか思い出そうとしてる。

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