第11話 願い星ひとつ。

願い星ひとつ。

願い星ひとつ。

君の願いは何、と星が問う。

僕の願いは―――

言葉が出ない。

僕の幸せだろうか。

君の幸せだろうか。

それとももっと違うものだろうか?


願い星ひとつ。

願い星ひとつ。

願い事ひとつ満足にできない僕を、君は何て思うだろうか。

どれだけ言葉を尽くしても、

どれだけ言葉を並べても、

君が一番だったこと。

その想いですら、

君に届かなかったというのに。

願い星ひとつ。

そこに願いを掛けたとして、

それが叶うと誰が言えるのだろう。


願い星ひとつ。

願い星ひとつ。

僕の望みはひとつだけじゃない。

君が幸せになること。

君が成功すること。

君が毎日楽しく暮らせること。

君が僕のせいで苦しまないこと。

だからきっと。

そうだ、きっと。


願い星ひとつ。

願い星ひとつ。

ひとつだけ、望みが叶うのなら。

いっそ、僕が生まれたことを無かったことにしよう。

きっとそれで全部、うまくいくんだ。

だけど知ってる。

そんな願いは、

誰も叶えてくれない。

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