第2話

 人間と言うより彫刻と言っていいような綺麗な顔立ちに、光と反射する金髪と金色の目。

 人間とも思えない綺麗な顔をを向けられ、私は呆然と立ち尽くし。


 ……てるように見せかけ、内心は罵詈雑言を吐き捨てていた。


 何が愁傷だ。

 そう思うなら、その半分でも敬意を持って謝罪することはできないのだろうか、この人外顔面は。

 口にしたら父親がすっ飛んできて土下座しそうなことを内心で考えつつ、表面上はにっこりと私は口を開く。


「改めまして旦那様、私は……」


「旦那様など呼ぶな。怖気がする」


「……は?」


 その瞬間、私の顔から仮面が剥がれかけることになった。

 咄嗟に直ぐ化けの皮をかぶり治す。

 しかし、そんな私を見るカズタリアの顔に浮かぶのは嘲りの表情だった。

 それは何より雄弁に旦那が私の皮に気づいたことを物語っていて、私の怒りがさらに増幅される。

 それを必死に押し込む私に対し、嘲りを隠さない表情のまま、カズタリアは口を開く。


「アズリヒア伯爵令嬢、お前は俺の寵愛を受けられると思ってここにきたんだろうな。悪いがそんな未来は実現しない」


 嘲りの上に僅かな嫌悪感を滲ませながら、カズタリアは告げる。


「俺はお前等のような女が嫌いだからな。表面上そつない表情をしながら、その実俺を誘惑することしか考えてない。悪いが俺はお前に嫌悪感しか感じない。お前の父には金を借りている手前、強くでれずお前をめとった。だが」


 そこで初めて笑みを消したカズタリアは私に向けて、嫌悪感を滲ませた表情を浮かべ告げる。


「俺とお前はあくまで政略結婚。お前はただのお飾りの妻でしかない。それだけは理解しておけ」


 そのカズタリアの言葉を私は無言で笑顔を浮かべた状態で聞いていた。

 にっこりと、笑ったままで。


 もちろんその内心は、爆発寸前。

 けれど、それを最後の理性で一旦押さえながら、口を開く。


「分かりました。侯爵様の仰ることは理解しました」


「ほう、アズリヒア伯爵令嬢は随分聞き訳がいいな。俺は嫌いではないぞ」


「代わりと言ってはなんですが、私からも少しお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


「ふん、聞くだけは聞いてやる」


「では」


 そう許可を取った上で、私は胸にたまっていた怒りを解き放った。


「まずは一発殴らせてもらいますね」


「……は?」

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