十二噺 刷り込まれた癖

 中学の時に初めての恋をした。

 と、同時に同級生にひどい癖をつけさせられた。


「ハナビシ。好きな人が涙目で許しをこうたらどう思う」

 何言っているんだこのアホ。

 好きな人に許すも何も無いだろう。


 そういう許す許さないはもっと深い関係性になってからだ。


 と、思っていると毎日。


「想い人をいじめると涙目を」

を、すりつけられているうちに、私は好きな人には涙目で許しをこわれるのが本来の性格では無いかと思うようになった。


 どちらかと言えば受け身なのに、なぜか受け身なのに相手には涙目でいて欲しい。矛盾が起こっている。


 待てよ。作品を描く上で受け身でありつつも、攻めである。これほどお得な事は無いのではなかろうか。


 私に刷り込んだアイツこそ私を好きだったのかもしれない。面は良かった。乗り換えても良かったかもな。

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