十三噺 トランペットの売買契約

 吹奏楽強豪校のトロンボーン奏者のYとその彼氏Zが、三年前に交際をしていた。


 Zは強豪校のファンになり、Yと交際を続けていたが、破局を迎えた。しかし、もう一度復縁出来ないかと機を伺っていた。


 Yは元々トランペット奏者で『Hというメーカーの何百番の何号のトランペットが欲しいな』と常々言っていたことを思い出したZはその品番の中古のトランペット十二万円をプレゼントした。


 私の中での普通では考えられないような事が起こった。元彼に十二万円を唐突に貰ったら、かなり怖い。しかも下心が透けていて、かなり嫌だ。ZはいつになってもYから礼を言われないことで心配になった。


 そこで周りに「なぜ自分は十二万もはたいて楽器を買ってやったのに、向こうは何も言わないどころか。SNSでも公表しないのか。礼儀知らずだ」と。


 その後、ZはYと話題を共有する為に新品のサックスを買ったが、今日に至るまで吹いた形跡が無い。

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