四噺 物語風タッチの実話

 けして父は出来た人では無かった。

 小心者で器量が大きいとは言えない。頭も良くなくて母に言われたら何も返せない。弱い男で最高の父親だった。


 父は仕事で東京に行くことが度々あった。東京に行くと必ず会う人たちがいるJという書店に勤めていた時の先輩でVという映像作成会社で監督やスタッフをしている先輩。今、Vは無いけど父が私にその先輩たちがどのような名前の人たちであったかを教える前に天国へ旅立った。


 Z県のJという書店に勤務していたもう七十歳に差し掛かっているだろうVという映像作成会社に勤めていた先輩たち。互いに仲が悪い二人とそれを押さえる二人の先輩。


「アキが来るっていうから、この五人で飲めるんだ」

 それがまるで一番の名誉のように語る父は誇らしげに見えた。

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