最終話 次世代への継承

「おめでとうモロス!」


「モロスおめでとう!」


「マギ主任お綺麗です!」


「マギさんお幸せに!」


 ……参列者の大半は、お互いに仕事関係。

 個人的な知り合いとか、仲間はちょっとだけ。


 僕らはそんな仕事関係の参列者に、来てくれたことを感謝して回り。

 その後に、個人的な知り合い由来の参列者に感謝を述べに行った。


「マギ先生。今日はおめでとうございます」


「おめでとうございます先生」


 ……まずはガイザー夫妻。


 この人たちが僕のところに来てくれなかったら、今日は無いんだ。

 この縁は、とても大切なものだと思う。


「ベネットさん、新しい体の調子は?」


「絶好調です。パワーは以前のままで、デザインは一般ヒューム女性そのままですし」


 ベネットさん、ニコニコ顔。

 嬉しいね。

 女のボディで、獣に引けを取らないレベルの怪力。


 この相反する要素の両立のためにどれだけ考えたか。


 満足してもらえてるなら何よりだ。


 ……まあ開発者としては、まだまだ満足には程遠いけどね?


 今度はこちらから、新式ボディの被験者役でお願いするかもしれませんね。




「モロス、おめでとう。美人で賢い嫁さん貰えて良かったな」


「おやっさん、どうも」


 そしてドワーフの盗賊ギルド関係者のドラゴンさんも来てくれた。

 この人が僕らの盗賊ギルド入りを認めてくれなければ。やっぱり今の僕は無いんだよね。


 奇妙な縁を感じてしまう。

 こういうのには。


「まあ、2人で頑張って暮らしていくんだぞ」


 こういう場合、子供の話が出がちだけど。

 僕らはカップリングがヒュームとダークエルフだからね。

 ハーフが生まれにくいから、そういう話は出にくい。


 そこのところ。

 ちょっとだけ楽。


 自分では絶対に叶えてあげられない、そのことを指摘されないのは。


「ええ。ずっと2人で頑張って生きていきます」


 僕はドラゴンさんの言葉に対し。

 満面の笑顔で同意をした。




「マギさん、今日はもう、最高におめでとうございます」


 上品に微笑みながら金髪の女神官。

 元仲間のリア。


 手を叩きまくって祝福してくれる。


「……こいつはありがとうございます」


 彼女に関しては、やっぱまだ苦手意識みたいなものがある。

 僕を追放した元仲間だし。


 けど。


 一番最初に今の僕を認めてくれた人でもあるんだよな。


「ネコちゃんのことは私に任せてくださいね。全力で新人から熟練に近づけて見せますから」


 オイオイ……

 あまりメチャクチャしないで欲しいな。


 僕の大切な弟子なんだし。


 そう思い、僕は苦笑いを浮かべた。



 そしてまた、数日後。



「焔丸。それなりに良い刀だからね。第7位階に到達したら活用するんだよ?」


「はい! 分かりました!」


 古巣の貸家で。


 今日はネコが旅立つ日。

 エゼルバードのパーティーの一員となって、広い世界に冒険に出る日だ。


 僕はこの日彼女に、焔丸と……第6位階の幻影の魔法における秘伝・消音幻影を与えた。


「この秘伝を知っているのは、僕の師匠と、僕と、あとはキミだけだ。絶対に他の魔術師には教えるな」


 そう囁きながら伝授すると、彼女はすごく興奮した顔をした。

 そして


「わ……分かりました。私たちの流派の幻影魔法秘伝……私もいつか取る自分の弟子にしか絶対に教えません」


 そう、誓いを立ててくれる。

 嬉しいね。


 思わず笑みが零れる。


「じゃあ、頑張ってくるんだ。仲間は大事にするんだよ?」


 僕は1回失敗したから。

 そこは念入りに言った。


 彼女には、僕と同じ失敗はして欲しく無いし。


 彼女は、弟子は、ネコは。


「はい!」


 そう力強く答え。

 そして


「……先生の到達できなかった最終位階に、私が代わりに到達してみせますから!」


 この言葉を彼女に言われたとき。

 僕はとても幸せな気持ちになった。


<了>

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