エピローグ
第98話 自由の神の結婚式
グレイオールドを倒したことで、盗賊ギルドから報奨金が出た。
それが結構高額だったので。
僕はウィルソーの奥さんと娘さんを買い戻した。
報奨金は若干足りなかったけど。
足りない分は僕の貯金を切り崩して補填した。
……別に善意じゃない。
自分のやった仕事を意味のないものにされたのが腹が立っただけだ。
誰だって自分が綺麗に掃除した部屋を、メチャクチャに汚されたら腹立つだろ。
そのためなら、一時の金なんてどうでもいいよ。
あの親子はしきりに「ありがとう」と言って僕に頭を下げたけど。
僕が自分のためにしたことだからね。
あとはまあ、給料の運び屋と化した法的なクソ旦那に、一生養ってもらうんだね。
そして月日が流れた。
おおよそ、半年くらいかな。
色々考えたけど。
僕は、旦那と結婚式を挙げることにした。
だって僕は本当の女ではないから、彼の子供を産んであげることはできないし。
だったら、結婚式くらいはするべきだと思うんだ。
そうでないと、僕らはずっと恋人どまり。
夫婦とは呼べないだろ。
……研究所に祝い金は貰ったけどさ。
そういうのと、こういうのは別。
僕はそう思う。
「先生。綺麗です」
「ありがとう。一応礼を言っておくよ」
……僕を新郎である旦那にエスコートしていく役は、弟子のネコが引き受けてくれた。
新婦の控室で、漆黒のウエディングドレス姿になった僕。
自分の姿を鏡で見て
思った。
……うーん。
僕がコレを着る日が来るとはなぁ。
かなり複雑な気持ちだ。
僕が自分の思う最強美少女の姿を固定しているの、別に女になることに憧れて、じゃないからな。
元々は少年を誘惑するためだから。
まあ、今は旦那のためになってるんだけど。
着飾ることに興味がないわけじゃないけど。
ウエディングドレスに特には興味はない。
けどさ
今日は旦那のためだからね。
最高の思い出を作ってあげないとさ。
「じゃあ、今日はよろしくお願いするね」
そう僕が彼女に言うと
「任せて下さい!」
どん、と自分の胸を叩いて。
弟子は僕のお願いを引き受けてくれた。
そして僕は、ネコのエスコートでバージンロードを歩く。
これ、女性の舞台なんだけど。本来は。
……なんかゾクゾクするな。
この場で、僕の正体を知っているのは
弟子と
旦那と
参列者約3名と
あとはこの僕だけ。
神父さんも、参列者の大半も。
この結婚式は男女の普通の結婚式だと思ってる。
実は男同士の結婚式だなんて知らないんだ。
……なんか本当にゾクゾクする。
バージンロードが行きつく先に僕の旦那が待っていて。
彼は僕のことをじっと愛おしげに見つめてくれている。
……嬉しい。
僕は思わず微笑み。
そのままネコのエスコートを離れ。
旦那の隣に並んだ。
そして
「あなたたちは黒神インドラの前で、愛の強さが2人を死が別つまで続くものであることを宣言できますか?」
神父の愛の強さの確認。
僕らの結婚式は黒神インドラ式にした。
だから僕のウエディングドレスは漆黒で、旦那のタキシードも真っ黒。
創造神の1柱である黒神インドラは自由を尊ぶ神なんだ。
規律を尊ぶ白神バルナの逆なんだよ。
だから永遠の愛は誓わない。死ぬまで続く強い愛であると宣言するだけ。
誓いでは無いんだ。
続かなかったら本人たちの自己責任で、別に罰は受けない。
けれども、まあインドラに呆れられるね。
そういう位置づけ。
こんなので良いのかと僕は思ったけど。
彼と僕とでは、この神様くらいしか認めてくれ無さそうだからね。
仕方ないよ。
そして
「ええ。宣言します」
「僕も宣言します」
2人で宣言し。
僕らはそこでその宣言の証明として。
その場で旦那と夫婦のキスをした。
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