第79話 事件の真犯人は?
「その推理はどういう感じなんだ?」
旦那の言葉。
それに関して、僕は語った。
「まず、マーズさんはヒュドラ氏の後継者筆頭だったわけだよね」
「うん」
その状況で、ヒュドラさんの胸を刺させた。
今回は僕が立ち合っていたから真実に気づけたけど、そうでなければ間違いなく失脚してるよね。
なので……
「その目的は、マーズさんの失脚」
そうみるべきだと思うよ。
そうすると、次は……
マーズさんの失脚で、誰が得をするのか。
その視点が重要になってくるよね。
「とすると……」
すると僕の旦那は僕の話から
「黒幕は次点のヒュドラさんの後継者ってことなのか……?」
僕はそんな夫の真剣に考えた末の言葉を
ゆっくり首を左右に振って否定した。
ヒュドラ氏の後継者としての筆頭はマーズさんで。
その下の地位には、3人の人間がいる。
いずれもヒュドラ氏の子供たち。
ギルドの女魔術師のミューズ。
学者のプロメテウス。
そして剣豪のプルート。
ミューズは金髪碧眼の美女で。
サラサラした長い髪がとても綺麗で。
かなり高位の魔力魔法を使いこなすそうな。
主にギルドの諜報部で仕事してるらしい。
人望があり、常に身の回りには手下の女盗賊が多数いる人物だ。
そしてプロメテウスはギルドの物品管理部門で働いている男性。
眼鏡の男性で、その相棒が双子の弟。
こちらは忍者で、兄弟の二人三脚で頑張っているらしい。
ギルドに運び込まれて来た物品を鑑定したり、必要に応じて希望する部署に下げ渡したりしてる。
最後のプルートは剣の達人で。
彼はコロシアムの運営を任されている人間の1人だ。
元々はコロシアムで黄金闘士として活躍していたとか。
彼は「拙者に護衛など不要!」と言い放ち、容易に1人になる男の人だった
この中で、僕が怪しいと思ったのは……
「マギ」
モロスが、ギルドの本店から武闘派の構成員を数人、引き連れて来てくれた。
いずれも男性だ。
頼もしいね。
モロス自身も黒っぽい戦闘服に身を包み、すっかり戦う準備を整えているよ。
「ありがとう。じゃ、行こうか」
彼に微笑みかけ、歩き出す。
向かう先は、盗賊ギルドの戦闘訓練場。
街外れに設けられた道場だ。
そこで彼は、ひとりで訓練をしているらしい。
「……お前の言うことを疑うわけじゃないけど」
モロスが僕に話し掛けてくる。
僕は彼に視線を投げた。
彼は言った。
「まさかあの人が、というのが正直な気持ちだよ……あの人は兄弟のことは大切に思っていたはずなんだ」
そうかもしれないね。
でもそれはさ……
僕の頭の中で考えていることがあった。
可能性として
「……そっくり別の人になってたら、そういうその人への信頼なんて意味無いよ」
成り代わり。
その可能性を考慮に入れると、それまでの振る舞いなんて何の判断材料にもならない。
「……許せねえな」
もし、そうならね。
だけどその場合の実害がデカ過ぎるから、少々乱暴にならざるを得ないよ。
下調べしている時間が無い。
……そう、言葉を交わしている間に僕らはギルドの訓練場に辿り着く。
いよいよだ。
僕は観音開きの戸を開けた。
畳敷きの道場。
うす暗いその道場内で、逆立ち腕立て伏せをしている人影があった。
僕は彼に呼びかける。
「訓練中すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」
そこで言葉を切る。
人影は気にせず、腕立て伏せを続けている。
……僕は意を決した。
重大な一言だ。決断が要る。
……後戻りできない。
僕は言った。
「エピメテウスさん」
……そこで僕らを無視して訓練を続けている黒装束の男性に。
プロメテウスさんの双子の弟。
エピメテウスさんに。
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