第78話 使命付与の魔法の恐怖
「使命付与って……自分の命に別状がない命令を遵守させる法力魔法だよな?」
「そう」
彼には色々教えてるからね。
ちゃんと僕の話を覚えてくれてて嬉しいよ。
使命付与は特定の「自分の命に関わらない命令」を遵守させる第5位階の法力魔法だ。
とても強力な魔法だね。
色々制限はあるのだけど。
まず、その命令順守で自分の死が確定するような命令は通らない。
なので「自害しろ」って命令は通らない。
敵地で暴れろって命令は通るけど。
それは、暴れた後の自分の立ち回り次第で逃れられる可能性がゼロではないから。
あと、普通に考えて実現不可能な命令も無理。
例えば「世界の王になれ」だとか「王女様と結婚しろ」って命令も通らない。
そして「毎朝必ずお祈りしろ」みたいな達成条件が無い命令や、あってもそれが曖昧な命令も無理。
例えば「現在の友人全てにキスをしろ」というような。
友人関係は双方の思い込みの一致が必要だから、何をもって友人というのか考え込んでしまうでしょ?
そういうのはダメなんだ。
で、それ以外なら命令は全て通る。
お前の父親を殺せ、でも。
お前の母親を犯せ、でも。
無論、一般的な神官だと、そういう道義上許されないような命令は、創造神が許さないんだけどさ。
邪教神官はその辺が無いからね。
だから邪教神官が使う「使命付与」の魔法はとても恐ろしいんだ。
「マーズさんは父親を殺せって命令をされていたってことか?」
「うーん」
僕は旦那の発言について、腕を組んで唸り声を立てる。
それは……違うと思うんだよね。
何故って……
「違うのか?」
「うん……ヒュドラ氏の命を取れって命令だったら、他人の目のある状況で襲わないかな」
だって邪魔が入るだろうし。
救助だってされちゃうし。
それに……
「マーズさん、強迫観念は自分の父親を刺すこと、だったよね」
殺せってことならそう言うよ。
それが使命付与の魔法効果だ。
そんな僕の分析を聞くとモロスは大きく頷いて
「なるほどなぁ」
納得してくれる。
で、彼はマーズさんに向き直り
「……マーズさん……その強迫観念がいつ生まれたかは分かりますか?」
そう訊ねる僕の旦那。
その言葉に、マーズさんは首を横に振る。
「難しいと思うよ」
だから僕は旦那にこう解説する。
それはいつからキミが僕を好きだったのかを正確に指定しろって言ってるのと同じだから。
気持ちには目印をつけられないからね。
分かんないでしょ?
そう言ったら、僕の旦那は
「……なるほど。そういうものなんだな」
納得する。
こういう言い方は彼に響く。
……僕の方はちょっとだけテレてしまった。
相手の好意が自分にあるのを前提で話すのって、慣れないなぁ。
そして少し、ドキマキしていると
「じゃあ、どうするんだ?」
そこに僕の旦那は訊ねてくる。
僕ならそれでも有効な手立てを考えてくれると思ってくれてるのか。
うん……嬉しい。
だから僕は答えたよ。
「正確に魔法を使われたポイントは分からなくても、その内容から推理は出来るよ」
僕はそう、人差し指を1本立てて。
自分の旦那に僕の推理を披露した。
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