第77話 マーズさんに何があったのか?
マーズさんを縛り上げ。
その目の前で僕は目覚めを待つ。
僕は1人ソファに座っていた。
「マギ、大変だったみたいだな」
そこに僕の旦那がやってきた。
今日は新人に鍵開けや罠解除等の基本技能を教える日だったのかね。
普通の服だった。
盗賊ギルドに人を出して、頼んだんだよね。
僕の旦那を寄越してくれって。
「悪いねモロス。忙しかったでしょ?」
「ギルドの命令だったら応じるさ。……しかも、お前の指名だったらなおさらな」
そう言葉を交わし、僕らは軽く唇を触れ合わせるキス。
こういうこと、だいぶ自然にできるようになったなぁ。
「マーズさんはヒュドラさんの跡継ぎ候補筆頭だ」
キスの後、耳元でそっと囁かれる。
なるほど……
アリガト。
お礼のつもりでもう少しチュッチュしていると
僕らの前でマーズさんが目覚めはじめた。
うう……と呻きながら。
「……おはようございます。マーズさん」
僕は彼にそう声を掛けた。
さて、どう出るか……
「……何で俺はあんなことをしてしまったんだろうか?」
マーズさんの開口一番、出て来た言葉がそれだった。
正直、あまり驚かなかったよ。
ヒュドラ氏を刺したとき。
あれは普通の状態じゃ無かった。
夢遊病みたいな感じだったね。
ヒュドラ氏を刺さなきゃならない。そういう思いに突き動かされているような。
僕は一応彼のそんな言葉を信じた。
信じはしたけど……
「嘘を吐いても魔法で感知できますよ?」
これは一応言っておく。
すると
「嘘じゃない!」
即座にこんな言葉が飛んできたんだ。
……よし
僕はこれで、嘘じゃ無いと本当に信じることにした。
僕の言った「嘘の感知」
これは半分くらいフェイクなんだよね。
正確に言うと、現状魔力魔法に嘘を感知する魔法は無いんだ。
直接には、だけどね。
なので、僕がこういう発言をした場合。
返って来る言葉としては
「そんな魔法は無かったはずだが?」
「嘘なんか吐いていない!」
「もはやこれまで」
この3択になる。
このうち、2番目の返答が出て来たときが見どころだ。
本当に嘘を吐いていないなら即座に嘘を吐いていないことをアピール。
そして嘘を吐いているなら僕の言ったことで必ず考えるだろ?
それがなく、即座に嘘を吐いていないアピールだった。
だからまあ、信じることにしたんだ。
これでもし、僕の言ってることを吟味してるような仕草があれば、搦め手で嘘感知に動いたんだけど。
……どうするのかって?
それは簡単。
「禁忌の魔法」で、嘘を禁忌に設定するんだね。
そうすると嘘を吐くことがタブーになるから、嘘を会話から取り除くことが可能になる。
「何があったんです? 話して下さい」
そう言った。
マーズさんが言うには。
ヒュドラ氏を刺さなければならない。
そういう強迫観念のようなものがあり。
それに突き動かされて、やった。
これが真相のようだ。
で、今はそんな思いは無いらしい。
……なるほど。
「マギ」
考える僕に、旦那が声を掛ける。
僕は視線を向けた。
彼は言った。
「今ので何か分かったのか?」
彼の言葉。
……気づかれちゃったか。
なんか嬉しいね。
理解されるのって。
「もちろん」
僕は頷き、答える。
「マーズさんは使命付与の魔法にやられていたみたいだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます