第52話 私を働かせてください
「助けてえええ! 溺れるぅぅぅ!」
水飛沫を立てながら女性が溺れてる。
結構綺麗め。
それを確認し、ガイザーさんが鎧を脱ごうと動き出した。
いやいやいや。
そのリアクションであなたに対する好感度上がったけど、ちゃいますやん。
どうみてもあれはスキュラですやん。
「違うかもしれないでしょ!」
……するとなんかキレられた。
根は相当純朴な人なのか。
前からなんとなくそうなのかなーと思っていたけど。
正直、それはアホだと思うけどさ……
嫌いなアホさじゃないよね……
僕は腕を組んで考えた。
僕はどうすればいいんだろうか?
「私が確認してきましょうか?」
そこで奥さんが割って入って折衷案を出して来た。
いやいやいや。
幸い、生首のあなたには気づいてないみたいだけど。
飛んで行ったら絶対ばれますやん。
さっと僕は奥さんを回収。
「不用意に飛ばない様に。バレます」
「……すみません」
小声で、彼らは分かってないかもしれないので、僕は自分の考えていることを述べた。
そもそも、僕らはスキュラを狩猟するためにここに来てるのだから、逃げられたらイカンのですよ。
なので「あ、これは勝てんわ」と思わせるとダメなんだよな。
自分が狩る側として最後まで勝ち誇らせないと駄目なんだよ。
だから不意打ちは必須だから、ここで麻痺を使って身体の自由を奪うのが一番楽なんだけど……
それはイカンのよね?
だったら……
「しょうがない。僕が行くか」
……結局この手しか無いんだよな。
物理攻撃ダメージをカットする力の盾の魔法は、僕しか使えないし。
で、それで引きずり込まれて、至近距離で念動力使って、持って来た焔丸を念動力で操ってスキュラを斬るか。
それしかないか……
そう思い。僕は印を結んで魔法語を唱えようとした。
そのときだった。
「マギさん、すみません。何が何でも私を働かせる方向で、何か思考を進めてはいただけませんでしょうか?」
割って入る様に。
ベネットさんが言って来たんだよね……
「……気持ちだけで喋ってるなら却下で」
「私は息をしていません」
なので、水に引きずり込まれても、溺れることは無いんです。
……確かにそうか。
それは考慮に値する。
水中呼吸、水上歩行の魔法はある。
でも、魔法は使うと使用回数が減るからね。
それに、地上にいた方が絶対魔法を使用するのには都合が良いから。
その点で、ベネットさんを囮にする方法は良い方法だ。
ベネットさんから的確な一言が返って来たので、僕は思考を進めた。
そして僕はベネットさんを送り出した。
ベネットさんは……
生首では無かった。
身体がきっちり付いていた。
彼女は歩いていく。
湖に向かって。
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