第34話 2人目の債務者、その結末
「グリフォンが起きてしまうかもしれないんです。私の仲間の戦士に任せると」
理由を挙げる。
一応、筋の通った理由を。
ガイザーさんは金属鎧をつけてるから、動くとカチャカチャ言うんだよね。
だからコソコソ行動するのには向かない。
一応、説得力はある。
さて……
ここで「ネコにさせられないんですか?」とか「鎧を脱げばいいじゃないですか?」とか
そういうことを言い出して来たら、呆れる。
お前はここまで付いて来ただけ。
ここまで何もしてないよね?
恥ずかしくないの?
お前今後、漢とかいう言葉使うなよ?
そしたら……
「分かりました……」
おお……
よう言うた。
ならば
僕は微笑んで
「運ぶ量は一気に全部である必要は無いんですよ? 結果的に時間内に運び切れれば良いんですから」
アドバイスはしておく。
失敗は見たくないしな。
ただ、事前にどれだけグリフォンが危険か。
それだけは伝えておく。
竜に匹敵するほど強い。
見つかると終わりだと伝えたら
真っ青になって震え出し
頷いた。
……恐怖が無いとミッションとして成立しないしね。
で。
リーター氏は一生懸命働いた。
グリフォンに襲われるという恐怖と戦いながら。
……やればできるじゃんよ。
真面目に働けや。マジで。
僕がグリフォンの巣から念動力で盗み出した黄金の美術品が運ばれてくる。
これが彼の成功体験になると良いんだけどね。
で、全部運んだ後。
地面に魔法陣を描き。
その上に盗んで来た美術品を並べる。
そして……
「デイズ カトン ハースニ ナイル」
魔力魔法第3位階の重量軽減。
これで、約20キロの荷物を、4キロにまで低下させられる。
……本来は。
僕はあえて、ここを10キロまで低下に留める。
楽勝だと不味いんよ。
で、モノをリュックに入れた後。
続けて
「タパ クラード ハタン ギフエンス オガ ヌートリナ」
魔力魔法第4位階の鉄施錠の魔法。
開閉式の収納物品に、鉄の強度を与えて。
加えて鍵を掛ける魔法。
これで、このリュックは鉄の強度を持つ
そしてキーワードを言うまで絶対に開かない。
この魔法のすごいところは、物品の本来の柔らかさを維持することと、その強度を鉄にすることを両立することなんだよな。
ただそのせいで、制限はあるのよ。
乱用できないって言うか。
例えば、構造上の工夫をして、開閉式の収納としても使えるシャツを作り。
そこでそれを自分を収納するように着て。
そして魔法を使い、それを鉄の強度を持ったシャツに仕立てあげるという使い方は出来ない。
それは収納するとは言わず、着るというからだ。
そして下山に入る。
問題のリュックはリーター氏に背負わせる。
ひいひい言ってたけど、応援して予定通り歩かせた。
計画通りに動くことが重要だからな。
一切手伝わず、最後までさせた。
重ねて言うけど、応援はしたが。
で。
「ご苦労様でした」
ドレワールまで戻ってきて。
盗賊ギルド傘下の故買屋の前で、僕はリーター氏を労った。
リュックはこっちで回収する。
「これにて、リーターさんの借金は返済されました。ご苦労様でした」
ペコリと頭を下げる。
すると
「あの……」
リーター氏が声を掛けて来た。
何?
そう思い、見る。
彼は
「俺の借金15万ゴルドですよね?」
「はい」
……なんとなく、何を言われるか予想は出来た。
「おつりって……」
はい。
それが来ると思ってました。
だから用意はしてましたよ。
返答をね……。
「……逆に足りなかった場合、もう1回あの山を登る覚悟があるなら、考えますが?」
美術品が15万ゴルド以上の値段で売れたならおつりを要求して。
逆に足りなかった場合は責任を取らない。
そんな甘えた意見は通るはずが無いんだよ。
それを笑顔で言うと、彼はしばらく考えて
「……分かりました」
そう返答。
あなたが世の中舐め腐ったクソ意見を言わなくて、僕は嬉しいよ。
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