第33話 グリフォンのお宝ゲットしろ

 ヒポグリフという幻獣がいる。

 姿形はグリフォンに似てる幻獣だ。


 グリフォンと違うのは、身体の後ろ半分が馬であるということで。


 この幻獣がこういう姿なのは、その生まれのプロセスにある。


 実はグリフォンは、馬肉が好物で馬を発見すると襲って捕食するんだけど。

 雌馬に関しては腹がよほど減っていない限り、襲わず。

 交尾してハーフを作ってしまうんだよね。


 どういうことなの?

 非常に興味深い現象。


 あんだけ姿に開きがあるのに、よく性的に興奮できるよな。


 話を戻して。


 そのハーフこそが、ヒポグリフ。

 この幻獣は、グリフォンの能力と馬の能力を併せ持ってる生き物で。


 グリフォンは気性が荒く、決して飼えない生き物なんだけど。

 ヒポグリフは馬の血が入っているので、頑張れば家畜化できる。


 もっとも、ヒポグリフには生殖能力が無いそうで、1代限りの家畜なんだけど。


 まあ、そのせいもあって、結構高く売れるんだなぁ。


 でね。

 実は冒険者の酒場で、見つけてしまったんだよね。

 ヒポグリフ捕獲依頼。


 この近辺でヒポグリフが発見されたから、生きたまま捕まえて引き渡してくれたら1万ゴルド。

 そういう依頼だった。


 聞き込みしたら、ちょくちょくこういう依頼が昔からあるらしい。

 ということは。


 この近辺の高山に、グリフォンの巣がある!


 そういう判断、おそらく間違ってはいないはずだ。

 問題は、それほど昔からグリフォンの巣があるなら、巣をもう荒らされてて、すでに貯め込んでいる黄金の量は大したこと無い可能性だけど。

 グリフォンはドラゴンに匹敵するほど強いから、おそらく大丈夫だと期待する。

 僕はこう見えて、そうそう居ないレベルの魔法使いマジックユーザーだしな。


 ……追放されたけどな!


 他の期待できる理由としては、黄金は重いので、一獲千金を狙う場合効率が悪いというのもある。

 15万ゴルドを得るために、150キロを運ばないといけないんだものな。

 そんなの僕レベルの魔法使いなら、他の仕事探すでしょ。




 そして。


 まだ日の高いうちに高山の頂上に到着。

 グリフォンの巣を探した。


 透視と視力増強の合わせ技で。

 すると


(居た)


 居たよ。

 しかも……寝てる。


 黄金は……おお。

 かなりたんまりある。


 しかも……金塊じゃない。


 冠だとか、腕輪や指輪だとか。

 像だとか。


 装飾品や美術品の形だわ。


 ……考えてみればさ。

 金塊の黄金を、グリフォンがどこで集めてくるんだという話ではあるよな。

 こっちの方が自然か……


 で。


 美術品なら、金相場の価値見積もりは考え直さないと。

 これまで積み重ねた鑑定経験から、15万ゴルドに達するまで、バリバリ盗んでいくしかないな。

 ……よし。頑張ろう!


 まず僕は


「マナ デンジ エノカルフ ベクタ」


 魔力魔法第7位階「念動力」の魔法を唱え。

 寝ているグリフォンの傍に、山と積まれた黄金の美術品と装飾品の山から、高く売れるもの……主に美術品をチョイスし、念動力で運び出す。


 グリフォンの寝床から……グリフォンに見つからない、この近くの場所に。


 そして僕の見立てで20万ゴルド分に到達する量……おおよそ20キロくらいの美術品の山を築き上げる。

 魔法を使用したら4キロまで落とせる量……


 よし。お膳立て完了。


 ここで僕はリーター氏に向き直り


「リーターさん……グリフォンの宝の隠し場所を見つけました」


 そう言ったんだ。真顔で。

 そして


「リーターさん。ここで漢を見せて下さい……ここまで、その宝を全部運びだしてきてください。お願いします」


 するとリーター氏は


「ええっ! マジですか……?」


 焦り、怯え。

 声も小さく。


 僕の本気を疑う発言をしたんだよね。


 ……後がねえんだから、腹括れやテメエよぉ……!

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