第32話 どうやって取り立てる?
取り合えず家に帰って来た。
僕らの家。
広さ10畳の部屋3つ。
ボーン・ゴーレムという自宅警備員が3体、その安全を不眠不休で守り続けている安心の自宅。
建ってるの相当治安の悪い地域だけどな!
家賃激安! 治安最悪! でもボーン・ゴレームのせいで安心だ!
僕らの家を攻略するために、僕の会心のボーン・ゴーレム3体を相手にできる空き巣は存在しないからな。
「とりあえずあのダメ人間がギャンブルに走る気持ちを封印して来たけど」
取り立てるお金15万ゴルド。
これを工面させるにはどうしたらいい?
およそ普通の男の年収の3倍の金額だ。
僕は皆の意見を求めた。
「そもそも何でギャンブルに嵌るんですかね?」
ネコの意見。
言い方は冷静。
「漢を持ち出してましたけど……絶対にそれが理由じゃないですよ」
そんなの言いだしたら、家族のために一生懸命働いて、下げたくも無い頭を下げるのも漢ですし、キツイ仕事を文句言わないで最後までやり遂げるのも漢ですよね。
……ふむ。確かに。
僕はああいうタイプが大嫌いなので、そこまで頭が回らなかった。
確かに、そうなのかもしれない。
「……結果を出せたのが、運任せのギャンブルだけだったからじゃないのか?」
そこに、ガイザーさんの言葉。
お嫁さんも合わせて
「……自分のしたことで、上手く行って結果が出たのが、カジノゲームだけだったんじゃないのかな……?」
なるほど……
これは仕事だからね。
僕の好悪は関係ないわけで。
結果を出して、僕らの盗賊ギルドの評価を最大限あげるにはどうすればいいか? これだろ?
「じゃああれですか。何か他に、あのダメ人間に成功体験を積ませてやれば、今度はそっちで頑張ると。そういうわけですか?」
言いながら、やってみる価値は十分にありそうだなと。
僕は考え、そのための算段を立て始めた。
次の日。
ヤツに借金返済のために仕事をしましょうと持ち掛けた。
魔力魔法の「魅了」込みで。
そうすると
ヤツにとってみれば
好感度親友レベル
外見最高
自分に好意的
そういう女に頼まれたんだ。
まあ、断らんわな。
逆に。
ここで断るようなら、もう救いようがない。
悪いけど、盗賊ギルドに身売りして、身体で借金を返してくれと言わざるを得ない。
で。
問題の男……リーターは大丈夫だった。
親友レベルで好きで、美人で、自分に好意的な女に「一緒に仕事して下さい」と頼まれたら、嫌とは言えない程度には漢だったらしい。
命拾いしたな。
そして何をしているかと言うと……
僕らは今、山を登っている。
このあたりで一番高い山ね。
何のためにそんなことをしているかと言うと……
グリフォンの巣がある可能性が高いので、巣を荒らしに。
グリフォン。
鷲の頭と翼と爪を持ったライオン。
表現するとしたら、そういう姿。
危険度でいうとドラゴンに匹敵する幻獣だ。
彼らはその習性で、その生涯を掛けて巣に黄金を貯め込むのだけど。
それをいただく。
根こそぎじゃない。
ホンの15万ゴルド分ほど。
で、結構重くなると思うのよ。
帰り道。
黄金は重いからね。
その荷物持ちとして来てもらった。
黄金の相場は……10キロで1万ゴルドだから……
おおよそ、150キロ盗めば良いな!
ハッハッハッハ。
って、お前鬼畜か!?
と言われるかもしれんけど。
重さを軽減する魔法があるんよ。
それを使う。
重量軽減の魔法。
例によって魔力魔法。
第3位階の魔法なんだけど。
術者の実力にもよるけど、重さを1割から9割までの間で軽減する。
僕は、2割まで軽減できる。
効果時間は1時間。
そして僕は第3位階の魔力魔法は8回使えるから、8時間は大丈夫。
だからまあ、150キロの黄金を、30キロにまで軽くできるんだ。
合計8時間限定だけど。
「まだ着かないんですか?」
ハアハア言いながら、リーター氏。
大きなリュックを背負わせて、高山の山登りに付き合わせている。
僕は腐っても元それなりのレベルの冒険者なので、この程度の基礎体力はあるし、僕がデザインしたこの姿にも、その程度の基礎体力は当然標準装備だ。
「頑張って! あなたならやれます!」
励ます。
ホントは死ぬほど嫌いだけどな。オマエ。
ネコはちょっと辛そう。
まだこういう経験無いしな。
良い経験だから頑張れ。
そしてガイザーさんは本職戦士。
きっちりしっかり山登りしてる。
で、奥さんは荷物の中に紛れてるから、この件では関係ない。
僕の見立てだと、あと1時間以内に頂上に着けると思うんだよね。
で……
何で、僕がこの山にグリフォンが居るのと断じたのか。
それにはちゃんと理由があるんだ。
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