第31話 2人目の債務者、出題編

 次の取り立て対象の債務者は、リーター。

 資産家の息子なんだけど……


 あまりにギャンブルが好きすぎて、そのせいで勘当されたらしい。

 お前は金の価値を全く理解していない。

 そんな人間に、我が家の財産を継がせるわけにはいかない、って。


 で、家を追い出されて。

 日々、日雇い労働者として働いているんだけど


 その給料をほとんど、ポーカーやスロット……カジノで溶かしてしまうらしい。

 そして生活費を借金で賄い……


 その結果、借金額が15万ゴルド。


 リーター氏は、年齢は24才のヒューム。

 なので、まだ若いんだよねぇ。


 つまり、払えないならこの人自体を連れて行くしかないわけだけど。


「……なんでそんなにギャンプルが好きなんですか?」


 リーター氏の寝泊まりしている場所……馬小屋。

 その馬小屋の外で。

 

 面談的に、向かい合ってしゃがんで座って。

 話し合い。


 リーター氏は……無精ひげが多く、肌の状態も悪い。

 若いはずなのに、なんだかくたびれはじめている男性だった。


 食べているものが悪いのか。

 まあ、借金で生活費を賄うような人、生活はメチャクチャになるよね。


 おまけに寝泊まりしてる場所が……馬小屋だからなぁ。


「ギャンブルは漢の世界なんすよ……女性には分かって貰えないかもしれないけど」


 ……来たよ。

 漢。


 自分に自信がない男ほど、使いがちだよね。

 そういうのはなぁ、行動で示すんだよ。


 とりあえず言っておけば正当化できると思ってんだね。

 呆れるわ。


 ムカつきつつ、僕は訊いた。笑顔で。


「……どのへんが漢の世界なんでしょうか? 分かるように教えていただけますか?」


「それは……」


 リーター氏曰く「100かゼロ、勝つか負けるか。人生を賭けて勝負をする。そこが漢の世界」らしい。


 ……ハッハッハ。

 聞いたかいネコ。彼は一体何を言っているんだ?


 何の生産性も無い、クソみてえな価値観だなオイ!


 ……なんちゅうか、俄然こいつを盗賊ギルドにそのまま引き渡すのは避けたくなってきたわ!


 なんとかして、15万ゴルドを取り立てる方法を考え出したいものですな。


 とりあえず……


「分かりました。あなたは漢道を大事にされている方なんですね」


 そう、彼を肯定する言葉を吐いておき。

 そのまま、ずい、と顔を近づけて、その手を重ねた。


 そしてこう言った。


「あなたの漢道が勝利に彩られるように、おまじないをさせてくれませんか?」


 ……まあ、自慢のデザインだからね。

 僕の外見。


 こういう態度を取れば、大体の男には好印象。

 特に、お金を使わないと女性と関りを持てなさそうなこういうダメ男には効果抜群。


 お金抜きで、女が近寄って来てるんだからね。


「い、良いですよ。お願いします」


 許可が出た。


 なので、墨を確保してきて。


 彼の腕に魔法語を書く。


 オガ(最強)ロイリィ(利益)ギフエンス(獲得)


 現代語訳にすると……一獲千金。


 で。

 彼に禁忌の魔法を掛け、彼の深層心理に「一獲千金を狙う」をタブーとして書き込んだ。


 ……1回持ち帰って、相談しないといけないからね。

 その間に借金をさらに増大されても困るし。

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