第17話 ダークエルフってのは

 ダークエルフってのは。

 国によっては、未だに人間扱いされてない人間種族だ。


 種族的特徴は長命種の人間種族・エルフとほぼ一緒。

 ただ、肌が浅黒いだけ。


 彼らは種族的に「邪神デミウルゴス」に祝福を受けているので、魔法に対して高い抵抗力を持ってる。

 そのため能力的にいえば、エルフの上位互換みたいな特徴を持ってる種族だ。


 ……まあそのせいで、世界中で迫害されてるんだけど。


 邪神デミウルゴスっていうのは、この世界を創造した白神バルナと黒神インドラという2柱の神が、この世界の支配者になる種族を、というコンセプトで最初に創造した種族から生まれた邪神。


 その最初の支配者種族ヒューマンは、ヒュームの上位互換みたいな種族だったそうだ。

 外見はヒュームと一緒なんだけど。

 寿命が無く、高い魔力を持ち、加えてあらゆる動物に引けを取らない身体能力を持っていたとか。

 完全にヒュームの上位互換だよね。


 とっても優秀で、非の打ちどころの無い種族だったそうで。


 そのせいで……


 彼らは神を滅ぼして、世界の真の主人になろうとしたそうだ。

 神より俺らの方が優秀だろ、と思ったらしい。


 で、返り討ちに遭った。


 慢心はいけないよな。


 その後、創造神たちは、前の種族は欠点が無い完璧種族にしすぎたせいで失敗した。

 そのせいで慢心してしまった。

 次の支配者種族は欠点がある種族にしよう。

 そしてまず外見はヒューマンと一緒だけど、欠点だらけの種族ヒュームを作り。

 他の人間種族はヒュームの手助けをさせるために、ヒュームの特徴を一部崩して作っていったと神話で伝えられている。


 そして邪神デミウルゴスは、そんなヒューマンの後継種族が創造されているときに生まれたらしい。


 自分たちを勝手に作っておきながら、意に沿わなかったからと滅ぼして忘れ去り、後継者の創造に取り掛かっている。

 なんで身勝手なんだ、って。


 言わば創造神を呪う邪神だね。


 そしてダークエルフは。


 数万年前の古代王国時代に、エルフの部族のいくつかがヒュームの支配する世界に反感を持ち。

 部族ごとデミウルゴスの軍門に下り、誕生したとか。


 そのせいで、ダークエルフは「種族的に創造神を呪っている種族」と捉えられていて

 国によっては「ダークエルフには人権は無い。彼らは生まれながらの死刑囚」と法律を定めているところすらある。


 ……僕としては別に何もしてないなら何もする気は無いんだけどさ。


 彼は散々嫌な思いをしてきたんだろうなぁ、というのはその表情で見て取れた。


 だから


「ああ、ゴメン。謝る。気を悪くした?」


 頭を下げる。

 すると彼は


「……チッ」


 視線を逸らした舌打ちで返された。


 その様子を見守って、ドラゴンさんは


「……もういいか? んじゃあ、入団試験代わりにやってもらいたい仕事がある」


 そう言って、話をはじめた。


「ウチの事業で、格安のワイン製造があるんだが……」


 ドラゴンさんの続く話。


 盗賊ギルド製の格安ワイン。

 そのワインの偽物を作った馬鹿がいたそうだ。


 そのワインは人件費を安く抑えることで、高品質で格安、という夢の様な商品にしたのに。

 その粗悪な偽物を作った。


 で、盗賊ギルドの偉いさんたちは、外貨を稼ぐのに一軍の働きをするそのワインを貶めたヤツに怒り狂い。

 腕利き冒険者を雇って、犯人を探させたらしいんだよね。


 で、ついでに殺させたらしい。


 そしたら、その遺族が騒ぎ出した。


 ……実はその犯人、ある程度の社会的地位の有るヤツで。

 アホだったから喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を売ってしまい。

 その結果、粛清を受けたのに。


 遺族が逆恨みをして、その盗賊ギルドの重鎮を訴えたらしいんだわ。

 殺人教唆で。

 

 盗賊ギルドとしては、その生意気な遺族を皆殺しにしても良かったんだけど。


 それよりも、その遺族の財産を奪いつくして、裁判で検察を務める弁護士を雇う金をゼロにして思い知らせてやろうと思ったそうな。


 ……で。


「キミらには、その遺族が先祖代々の遺産を保管している遺跡の攻略をお願いしたい」


 そしてそこで見つけた宝物は、全部一度盗賊ギルドでチェックして、その後不要なものは全部僕らのものとなる。


 ……だって。


 まぁ、オイシイ話だよね。

 入団クエストにしては。


 だけど……


「遺跡への侵入に関する技術は僕ら無いと思うんですが」


「そこでこのモロスだ。彼は魔力魔法の修行を行った腕利きの盗賊だ。彼に任せれば大丈夫」


 ……なるほどね。

 彼は僕らのお目付け役という意味合いの他にも、僕らに足りない盗賊要素の補完という意味合いもあったのか。


 まぁ、とりあえず。


「……マギです。よろしく」


「モロス。まあ、仕事はちゃんとするから安心しろ」


 そして僕は手を差し出したんだけど。

 彼は嫌々ながら、一応握手してくれた。

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