第16話 盗賊ギルドの面接
場末の酒場で出会ったこの身なりの良い男性はモリタと言った。
モリタさんは黒い髪の毛がわしゃわしゃしたヒュームの小太りの中年男性で。
あんまりカッコいい男性ではなかった。
なかったけど
「ドラゴンさん」
「ん?」
モリタさんに別の酒場に案内されて、引き合わされた相手。
ドラゴンと呼ばれたドワーフ。
彼からの信頼は厚いみたいだ。
ドワーフ。
昔は岩妖精とも呼ばれたこともある人種。主な生息地は鉱山。
背が低く、筋肉質。そして男女ともに髭が生える種族で、彼らにすると、髭の立派さが性的アピールになるそうな。
種族によって美的感覚って違うんだよね。当たり前だけど。
この辺から、唯一絶対の価値観なんてねぇんだよと思うんだよね。
ドラゴンさんは茶色の髪と髭を持つドワーフで。
多分男。
聞いてないから分からんけど、仕草が男っぽい気がする。
そして海賊みたいな眼帯をしていた。
そんなドラゴンさんに
「この女性が、どうしても盗賊ギルドに入りたいって言うんですよ。とても信頼できる女性ですので、少し話してやって貰えないでしょうか?」
モリタさんが僕を紹介してくれた。
「どうもマギです。よろしくお願いします」
僕は頭を下げる。
そして
一緒についてきていた仲間に手招きをした。
ぞろぞろぞろ。
追加で2人。
3体のボーン・ゴーレムは外で待機させている。
……ちょっと不安だけどね。
2人に挨拶を促す。
「マギ先生の弟子のネコです」
「マギさんの仲間のガイザーです」
ぺこぺこ。
挨拶が済んだので、ネコには下がらせる。
彼女にはボーン・ゴーレムの管理を頼んでるからね。
ネコがタタタと、外に待機させてるボーン・ゴーレムたちのもとに駆けて行った。
その後、僕はドラゴンさんに許可を取って、彼の掛けているカウンター席の隣に腰を下ろした。
すると彼は話し始めた。
「……ドラゴンだ。雑貨屋の店主をしてる。……で」
ここで僕に顔を近づけて
「……一体なんで、ウチのギルドに入りたい?」
少し、声を潜めて。
まあ、ドレワールでも一応犯罪組織だからね。
実質この街の支配者でも。
……まあ、ここは隠すのは悪手だよな。
「諸事情で、盗賊ギルドの情報力を借りられる立場になりたいんです」
正直に言う。
諸事情というところを突っ込まれることを意識して。
「……諸事情?」
ほらきた。
なので……
「フレッシュゴーレム作成魔法を探しているんです。……その理由は……」
ちょいちょい、とガイザーさんを手で呼ぶ。
ガイザーさんはそれに気づくと慌てて近づいて来た。
で
「ドラゴンさんに奥さんを見せてあげてください」
「……え?」
ちょっと戸惑っている。
やっぱり、ちょっと抵抗があるのか。
でもな、やってもらった方が早いんよね。
「良いから」
そう言って、促した。
すると彼は
「分かりました……」
しぶしぶ、と言った感じで。
自分が大事に抱えていた包みの中身を、ドラゴンさんにだけ見えるように開いて見せた。
……さすがに驚いてるみたいだな。
動く生首がここにある、なんて。
「……この人を中心としたフレッシュゴーレムを作りたいんですよ」
「なるほど……」
ドラゴンさんは納得してくれたようだった。
そりゃ盗賊ギルド以外に頼りようがないだろう。
そのことについて。
そして
「うん。事情は分かった。次はキミらのやれることを教えてくれ」
僕らはそんなことを言われた。
そこで自己PRタイム。
どこの組織でも、採用してもらうには自分の身に付けた技量について売り込まないといけないのは一緒だ。
僕は魔法を数多く使えることと、ボーン・ゴーレムの研究家であることを訴え。
ガイザーさんはハッグを単独で討伐できる戦闘技能。
ベネットさんについては、スクライルであることを強調。
「分かった」
ドラゴンさんは腕を組みながら聞いていて。
そう、一言発した。
そして
「是非、欲しい」
おっ……
「……と、言いたいところだが」
と、フェイントを入れられて
ドラゴンさんは「ちょっと来てくれモロス」とカウンター奥にいる誰かに声を掛けた。
その人物、ドラゴンさんの言葉に反応し
「何だよ」
その人物、手に持った飲み物を飲み干して
こっちに来て
……さすがに驚いた。
その人物は容姿が整った、銀髪で細身の男だったんだけど。
耳が長くて。
肌が浅黒かった。
……この種族的特徴は
「ダークエルフ……」
思わずそう呟くと
「ああ?」
いきなり、不機嫌な目で彼に睨まれた。
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