第14話 犯罪組織に入ろうぜ

「犯罪組織に入る……?」


「そう。犯罪者になるってことさ」


 僕の言ったことを復唱するガイザーさんに、僕は頷く。


 何故犯罪組織……?

 そんなの、当たり前でしょ。


 犯罪組織以外、どこの組織が構成員にアンデットを抱え込むんだよ。

 そんなもん、犯罪組織以外無いじゃん。


「それが嫌なら延々遺跡潜りだ。しかも、戦士とスクライルの2名パーティー。他のメンバーは入れられない。理由は当然分かるよね?」


 ……ここまで言うと。

 2人は深刻な顔で沈黙する。


 気の毒だ。

 でも、事実だ。


 事実上、2択。

 いや、3択か。


 犯罪者になるか、無理筋の遺跡潜りを延々続けるか、それとも諦めるか。


 ……さあ、どうする?


 すると

 

 ガイザーさんが顔を上げて、こう自分に言い聞かせるように発言したんだ。


「……分かりました。ベネットに身体を取り戻してあげられるなら、罪人になる選択肢を私は選びます」


 おお……


 素晴らしいね。


 だったら


「それじゃ、明日早速、暗黒都市ドレワールに出発しようか。僕も手伝うから」


 さて、忙しくなるぞ。

 そう言って、僕は数年前に使っていた冒険者セットを引っ張り出そうと動き出した。


 そこに


「えっと、マギさん」


 なんか、呼び止められる。

 ……何?


 話は終わったじゃん?


 そう、思ったんだけど。


 ……なんか、困惑顔。


 んん?


 僕、何か間違ったこと言ったか?

 犯罪組織に入るという、倫理観以外の問題で。


 すると


「良いんですか?」


 だって。


 良いというか、そこしか無いでしょ。


 暗黒都市ドレワールは、この都市国家群同盟サウザントの中で、最も治安の悪い国で。

 最も大きな盗賊ギルドを抱える国なんだから。


 成り上がる犯罪組織は、なるべく大きなところじゃないと。


 じゃあ、最適解はドレワールでしょ。


 そう言った。


 言ったら。


「そうじゃなくてですね」


 私たちに付き合って、なんであなたまで付いてくるんですか?

 そりゃ、マギさんが来て下さった方が心強いのは分かってますけど。

 それでも、犯罪組織なんですよ?


 そう返しが。


 ああ……そゆこと。


 それについては……


「……僕は結局、永遠に活動する生き物を作りたいんだよね。骸骨兵に入れ込んでいるのも、それが主な原因だし」


 腕を組んで。

 続ける。


「ぶっちゃけ、骸骨兵作成魔法と、フレッシュゴーレム作成魔法のどちらか片方だけを学べたとしたら、きっと僕はフレッシュゴーレムを選んでいたよ」


 骸骨兵……情熱を掛けちゃいるけど。

 それは代替である面は否定できないよな。

 本当はフレッシュゴーレムを作りたいけど、出来ないからボーン・ゴーレム。


 だからまあ、僕にもメリットがあるんだよ。この選択は。


 ……そう言うと


 なんか、夫婦2人に泣いて感謝された。

 ……そこまでか!


 これは私欲なんだけどな!


 ……あ、そうだ。

 これは言っておかないと。


「ネコ」


「はい、マギ先生」


 ネコはまだ僕を先生と呼ぶ。

 呼んでくれるけど……


 言っとかないとな

 だから


「キミはついてくる必要は無いからね? そろそろキミも独り立ちできる位階ではあるし、これを機会に独り立ちしても……」


 そう言いかけると


「分かりました。ドレワールまでの道中で、気を付けるべきことって何かありますか?」


 その前に彼女は、被せるようにそう言ってきたのだった。

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