第13話 遺失魔法を狙え
「いえ、知らないです。死体から作る魔法生物をどうするんでしょうか?」
ガイザーさんがそう訊ねて来たので。
僕はそれに対して、自分のアイディアを述べた。
「奥さんの新しい身体を、それで作るんだよ」
というか、奥さんを組み込んでフレッシュゴーレムが作れないかな?
そういうアイディアなんだ。
それを言うと、えらく驚いていた。
「できるんですか!?」
期待が籠った声だ。
それに対し、ちょっとだけ言い辛かったけど。
ここも僕は正直に答える。
「分からない」
「え……?」
ここで、理解できないという顔色になるワケアリ夫婦。
だから同じように、僕は事実を教えてあげた。
「フレッシュゴーレムの作成技術は、古代王国時代の技術で、今は失伝してるんだよ」
これを言うと、ガイザーさんはあからさまに落胆して
「つまり事実上無理だってことですね? 突如技術が奇跡的に復活しない限り!」
声が少し荒っぽくなってる。
だいぶストレスを感じているね。
無理も無いけど。
「そうは言って無いよ」
逆にこっちは冷静になって、どう言えば言わんとしていることが伝わるかを考えつつ喋り続ける。
「言ってるじゃないですか! 古代王国時代の技術だって!」
「……僕の生き甲斐の骸骨兵作成魔法だって、復興したのはここ100年くらいの、現代では歴史の浅い魔法なんだよ?」
それを言うと、ガイザーさんは絶句していた。
多分、彼の中では
「魔法技術は数万年前の古代王国時代の技術が最高で、その後の今に通じる時代で行使されている魔法は低いレベル。そこから新たに進歩したり、復興したりしない」
こういう感じだったんだろう。
まぁ、無理もないとは思うけどさ。
分かんない世界の実情への理解なんて、そんなもんだよね。
「今でも別に普通に、遺跡で突如遺失魔法の詳細が書かれた古文書が見つかることってあるからね」
「そうなんですか……」
そういうの、復興魔法って言って。
魔術師の学院でお金を払うと学ぶことができるんだよね。
「だから、絶対無理って言って諦めるレベルでは無い。充分あり得る未来だ」
なんだけど……
まだ、問題あるんだよな。
「何か問題でも?」
……ベネットさんが僕の顔色を読み取ったのか。
そう訊ねてくる。
僕は頷いて
「……発見された古文書の類が、全部公にされるとは限らないってことだよ」
魔法を独占したい誰かが、見つけた遺失魔法の情報を囲い込む可能性。
これが結構あるからね。
伝説の中では……
時間を停止させる。
天候を操る。
魂を砕く。
そういう魔法があった。
そういう話があるんだよな。
だからそういう魔法の詳細が書かれた古文書が存在する可能性も大いにあるんだけど。
そんな情報を見つけた誰かが、一般公開せずに自分たちだけで秘匿する。
あり得るの分かるよね?
特に「時間停止魔法を使えるのは自分だけ!」なんて。
使い手としては最高の状態だろうし。
そのへんを説明してあげると、ワケアリ夫婦の2人は、絶望的な表情になってた。
「それを避けるには、自分たちで古文書を見つけないといけないってことですか?」
ベネットさん。
それに対し、僕は
「うん。一番確実なのはそうだね」
頷く。
するとガイザーざんは
「……あてもなく遺跡に潜るのか……あまりも細い蜘蛛の糸だ……!」
俯いてそう悲嘆するように言う。
……確かに厳しい道のりだけど。
それより良い手もキチンとあるんですよ?
だから……
「もしくは、どっかの犯罪組織で成り上がって、その情報収集機関を私物化できる立場になるか、だね」
言ってあげた。
無差別的に遺跡に潜る方法以外に取り得るやり方を。
……僕の発言に、夫婦2人は驚愕していた。
ネコは流石に慣れたのか。
黙って真顔で僕を見つめていた。
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