2章:ワケアリ夫婦との合流

第8話 田舎に引っ越して

 弟子を取った僕は、それまで住んでいた街を引き払った。


 ネコを弟子にすると言った以上、教育をつける義務があるし。

 正当な理由なしで、良い様に他人を利用するのは引っかかるしな。


 まあ、金がそこそこあったのと。

 知識もあったから。


 田舎の村に小さな家を買い、そこで仕事を見つけて何かをやるのはそんなに難しくなかった。


「ふたりで住むにはちょっと広いくらいですね」


「そうだな」


 僕はちょっとだけ嬉しかった。

 やっぱ、1人でいるのは寂しかったのかもしれない。


 村人の人数はそこそこ。

 ちょっとした山賊に攻め込まれたら、滅亡が視野に入るような、そんなド田舎。


 ここなら、僕のことをボーンコレクターと呼んで爪弾きにするヤツはいないし。

 ネコを一人前の魔術師に育てるにはちょうどいい土地だ。


 そこで僕は、研究をしつつネコを育て、そして村人相手に養生所のような真似をした。

 ど田舎だから、なかなか喜ばれたよ。




 僕はネコに魔法を教えるとは言ったが。

 魔術師っていうのは、教養が無いといけないんだよな。


 だからまあ、魔術を教える前に、僕はネコに歴史や読み書きを教えた。

 僕もやられたからね。


 僕の師匠に。




「魔法使うのに歴史の出来事知ってる必要なくないですか?」


 講義をするために、家のリビングで2人。

 延々ネコに歴史の授業をしていたら。


 授業が面白く無いのか、ネコがそんな文句を言う。


 ネコは……まぁ、酷かったよ。

 読み書きがまず満足にできないから、そこからだった。


 その後、歴史を教え始めたら、そんな文句を言われた。

 あのなぁ


「歴史の事実を知らないと、リドルを解くときに困るんだよ」


 そういうの、魔術師に要求される技能だし。

 あと、司祭になるときに役に立つし。


「文句を言わないで言われたことを覚えろ。食べていく手段として魔力魔法を使って行けるように、僕はお前に魔法を教えるんだから」


 食べていく手段としての魔力魔法は、軍隊で魔力兵になる、冒険者になる。

 この2択だしな基本的に。


 日常生活に眠りの魔法やら、明かりの魔法、鍵開けの魔法なんて要らんのだから。

 で、ネコはどうみても兵隊になるのは向いて無いし。


 そうすっと、冒険者1択だろ。


 ……ネコにそんなことを教えながら。

 自分の修行時代のことを思い出した。


 僕の師匠は……まあ、プロだったな。

 あの人以上の魔術師は僕は知らない。


 魔術師は合理的であるべきだ、って言ってて。

 で、同時に義理人情にも熱くあれとも言ってた。


 まぁ、言わんとすることは分かる。


 価値を理解したうえで合理的で非情な判断を下すのと。

 そもそも価値が分からないから、気にしないのは。

 天地の開きがあるよな。


 ……僕はそういうの、気にして来たつもりではあるんだけど。

 どうなのかな。


 結局……メンバーに嫌われて……叩き出されて……


 叩き出されたときはムカついてたけどさ。

 あいつらとも、楽しかったときが……


「マギ先生?」


 ……おっと

 ちょっと、暗くなってしまった。


 ネコが心配そうに見て来たので、僕は気を取り直した。


「じゃあ、古代王国の滅亡の直接原因になった『帝王位の継承不備』の話をするから、良く聞くんだよ?」


 そう言いながら、僕は帝王位の継承の原理原則の話をネコに理解できるようにかみ砕いて話し始めた。

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