第7話 魔法使いの弟子

「えっと……」


 いきなり地べたに額をこすり付けてお願いしている少女。

 一体、何故?


「弟子って、何の?」


 そう訊くと、彼女は顏を上げないで


「私も魔法使いになりたいです!」


 そう、ハッキリ言って来た。

 ……何で?


 ちょっと分からなかった。

 何でいきなり魔法使いになりたくなったの?


「どうして?」


 だから理由を訊ねたら


「マギさんはとても素敵です! 同じ女性なのに、自分を持ってて、誰にも頼らず、自分の夢を追い続けてる!」


 私もそうなりたいんです!

 私は女に生まれたら、夢を持ってはいけないんだと今日まで思っていたんです!

 でも、そうじゃない!

 探せば道なんていくらでもあるんだ! 夢を追えるんだ!

 女でも、自分らしく人間らしく生きていけるんだ!


 それを気づかせてもらったんです!


 ……そんなことをくっちゃべられる。


 まぁ、女に生まれると基本自由が制限させられるのはほぼ常識だけどさ。

 普通の家なら、女に自由は認めないのが基本だからなぁ。

 寺子屋に行かせない地域だってあるもんな……。


 でも「同じ女性」ってなぁ……


 うーん……


 ……僕、女性じゃ無いんだけどな。

 いやま、身体の外身は美少女で固定してるけどさ。


 心は男なわけよ。


 そこに誤解があるが……

 それ、解く必要は……


 無いか。


 多分キモがられるだけだよな。

 意味がない。



 ……うーん。

 それになぁ。


 この子、ここでバイバイしたら、またどっかで借金背負わされて、今度こそ売春宿に売り飛ばされる可能性大だよな。


 それはちょっと……酷いかな。


 だったら……


 うん。それに

 この子に、弟子にする交換条件で家事を全部やって貰えば、僕が研究する時間を多く確保できるし。


 あと魔法の修行、思い返せば。

 理論は座学で教えないと駄目だけどさ……


 制御の修行は自分との戦いだから、こっちから出来ることってそんなに無いわけで……


 ……うん。

 そうだな。


 こっちにもメリットはあるか。


 なので


「弟子入りは良いけど、僕に月謝を払うお金あるの?」


 あるわけないのをワカってて訊く。

 すると


「無いです! その代わり、身の回りのお世話は全部します!」


 ……100点の返答が返って来た。

 良いねぇ。


 ヨシ。


「……分かった。教えてあげるよ。ただし、家事は100%任せるし、ちょっとでも家事が疎かになったら即放り出すからね」


 そう言って許可を出した。


 そこでネコは顏を上げて僕を見た。

 とても嬉しそうに。


 そしてこう言ったんだ。


「ありがとうございます! マギ先生!」


 ……こうして。

 僕は弟子を1人、招き入れるに至ったんだ。

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