第4話 いきなり手が増えても困るんだが
「言っとくが捨て値で売って1万ゴルドだ」
強調する。
実際に捨て値で1万が保証できるわけじゃ無いけどな。
ここは強調するところだろ。
でないと受け取って貰えなくなる。
目は逸らさない。
ここは押すところだ。
すると
「……お、おう……捨て値で1万か」
揺れてんな。
よし。
ここで女を売った場合の話を
「……若い女は売値1万が相場。処女だったら2000ゴルドくらい上乗せされるんだっけか」
非処女はどうしようもないけど、捨て値を相場で売るのは努力次第でなんとかなる。
さあ、どっちがお得なんだろうね?
そう、彼らに心で呼び掛ける。
ケットシーのおっさんはしばらく考えて。
「うん……よし」
何か決意したようで
「分かった。交換しようか」
……彼女と指輪との交換に応じてくれた。
去って行く男たち。
……まあ、頑張れよ。
ちなみに言った数字は僕が見積もった数字だし。
適切にいけばそれ以上の値段で売れるだろうが、できないからといって僕のせいにすんなよ?
そして僕は男たちを見送った。
最後の1人が立ち去ってしばらくして。
僕は
「それじゃね」
当初の予定通り、僕は彼女を放置して出て行こうとした。
別に僕は彼女を惚れさせようとか、自由にしようとか思ってない。
僕は年少の少年にしか興味無いし。
大体、今の僕の姿は美少女だしな。
僕の方もこの子がノーマルである限り彼女の守備範囲には入らない。
だけど
「待って下さい!」
……呼び止められた。
んん?
振り返る。
すると
「ありがとうございます! 何か、お礼を!」
ウエイトレスの眼鏡の少女が、僕に頭を下げていた。
ん~
「別にあんたを救いたくて助けたんじゃないから。あのオッサンが大嫌いなオッサンに似てただけだよ」
正直に言う。
別にこいつに感謝されたくて助けたわけじゃないんだよ。
……まあ、だからといって万一「この私を助けさせてやったので、お礼をしなさい」なんて意味不明の発言をしたら、なんらかの制裁を考えたかもしれんけど。
「でも! 救っていただいて何もお礼しないなんて私の気持ちが済みません!」
……すっげえ勢い。
何が何でもお礼がしたい。
その気持ちが伝わって来る。
……ん~。
じゃあ、そういうことなら。
「じゃあ素材狩りしたいから、荷物持ち頼める?」
……このくらいしか思いつかないなぁ。
いざ、自分以外の手を与えられても。
持て余して困るんだよ。
……女の子に荷物持ちを頼むなんて、と言われても。
これくらいしか思いつかないんだからしょうがない。
すると女の子は驚いた顔で
「素材狩りって……お客さん、冒険者なんですか?」
「そうだよ」
まあ、今日は冒険者用の装備でここに来てないし。
赤と緑の布で彩られた「牙のローブ」
あれを着て無いからな。
見えんだろ。
楽な普段着で来てるし。
僕が冒険者と知って。
興味が湧いたのか
「……職業は?」
次に来た質問がこれ。
だから僕は
「司祭」
そう答えると。
女の子は、僕を羨望の目で見つめて来た。
……まあ、一応上級職だからね。
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