第2話 威勢のいいこと言っては見たが……
僕はエゼルバードたちと別れてから、職業を変えた。
あのパーティーを追い出されたとき、大きなことを言いはしたが。
正直、僕は魔術師としてこれから先の理論の習得に、限界を感じていたから。
魔術師という職業は、魔法語を通して世界に働きかけ、超常現象を起こすことにその真価がある。
この超常現象を引き起こすことを、魔力魔法の行使というんだけど。
全部で10ある魔力魔法の位階のうち、僕は第8位階の理解で限界を感じた。
ここから先は、多分僕はいくら努力しても理解することが出来ない。
9と10は無理なんだ。
その予感があった。
なので僕は職業を魔術師から司祭に変えた。
司祭は覚えることが多いけど、魔術師としての経験が無駄になりにくいし。
それに、あの僕を切った奴らのパーティーに無かった要素だから。
思い知らせることが出来るという思いがあったんだよな。
司祭という職業は……魔術士の魔力魔法と、神官の使う法力魔法を使用することが出来る。
そしてその職業上身に付ける豊富な知識により、おおまかではあるが、武具や道具の鑑定が出来る。
所謂
僕はそれまでに貯めた金で養成所に入り直し、鍛え直してもらった。
転職とはそういうものだ。
そこで2年くらい修行した。
すると僕は司祭の才能があったのか。
かなりの速度で成長し、瞬く間に法力魔法を第5位階まで使えるようになった。
そして知識を増やし、鑑定も行えるようになった。
より高ランクの
養成所を最高の成果をあげて退所し、僕は冒険者の店で自分を売り込んだ。
だけど……
「いやあ、アンタは要らないかな……」
「ボーンコレクター・マギだろ、アンタ? 要らんのよ。モラルの無いヤツって。いくら優秀でもさ」
「アンタの古巣の冒険者パーティーさ、アンタには散々手を焼いたらしいし。ウチには無理。他をあたってくれ」
……誰も僕を受け入れてくれない。
悔しい……
一瞬、姿を変えることを考えたが、それは即座に打ち消した。
この完璧美少女の姿に辿り着くまで、どれほどの試行錯誤があったか。
それを無にすることなんて出来るわけないだろ。
「あーあ。あのクソ野郎。僕の悪評まき散らしてくれたお陰で、就職口どうしようもないわ」
そしてその日も、昼間から僕は酒場で飲んでいた。
冒険者の集まる冒険者の店で飲むのは落ち着かないので、下町の普通の酒場でだ。
今の僕は、フリーの鑑定屋で生計を立てていたけれど。
正直、こんなのは冒険者の在り方じゃないし。
僕自身、面白く無いから、悔しさが募る。
……この街を出て、他の街でやり直すかな。
悔しいけどさ。
そう、カウンター席で、頼んでいた白ワインのボトルから、最後の一杯をグラスに注いだときだ。
「よぉ姉ちゃん、一緒に飲まねえか?」
……酔っぱらいのオッサンに絡まれた。
30才くらいか?
「……あと20才若返ってから来い」
そう言い放ち、グラスを傾ける。
「ああ? 別にいいじゃないかよ。来いって」
そう言って、しつこく僕の腕を引っ張ろうとするので
ギロリと
「……煩いよ。オマエ」
そう、喉の変身だけを解除し。
元の、男の声で言ってやった。
すると酔っぱらいのオッサンはギョッとし
「……悪かった。それじゃ」
酔いも醒めた感じで、退散していく。
……フン。
僕は気分直しに、酒をもう一口飲み、そこで当てに頼んだ焼き魚が遅いなと思い。
「ねえ、お姉さん。僕が頼んだ焼き魚、まだなの?」
そう、16才くらいのウエイトレスの女の子……僕の注文を取りに来た子……に訊ねる。
すると彼女は
「ああ、ゴメンナサイお客さん! すぐお持ちします!」
そう慌てた感じで返してきて、厨房の方に引っ込んで行った。
……ひょっとして、すでに作りはしているけど、それを運ぶのを忘れてたのか?
ダメな子だなぁ……
でもま、別に僕は彼女に致命的な迷惑を掛けられたわけでもないし。
それについてはそれ以上文句言わなかった。
そして
(酒がもう無いな……どうしよう……追加を頼もうかな?)
そんなことを考えていたときだ。
その酒場に、数人の男たちが雪崩れ込んで来た。
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