パーティーを追放された変態魔術師が、人助けをする話。
XX
1章:追放されてから弟子取りするまで
第1話 お前このパーティー出ていけ!
「お前、もうこのパーティーから出ていけ」
ある日、僕は酒場でパーティーリーダーの聖騎士のエゼルバードにそう通告された。
真面目を絵にかいたような金髪の美青年。それが彼を表現するのに一番適当な言葉。
そんな彼が僕にこんなことを言うなんて。
しかも、もう我慢の限界。そんな感じで、だ。
最初、僕はわけが分からなかった。
「……何で? 僕、パーティーに貢献して来たよね?」
ピンポイントで暗闇の魔法を使って敵を行動不能にしたり。
剣に魔力付与の魔法を使って、通常の物理攻撃が通じないワイトやバンパイア相手の戦闘で、キミらを戦えるようにしたり。
僕は納得できなかったから、今までの僕の仕事を訴えた。
僕はパーティーの魔術師の仕事はしてきた。リストラされる謂れは無い! と。
すると
「……暗闇の魔法ね……最近の私たちの戦いでさ、戦う魔物たちは大体暗視能力持ってるのよね」
ミステリアスな雰囲気の、エゼルバードの恋人の黒髪の女戦士マオがそう、僕に冷たく告げる。
露出多めの服を好み、一見冷たそうで淫靡な雰囲気だけど、根は相当真面目で、情に厚い。
そんな彼女がこんな風に続けた。
「それに、冒険の過程で、この伝説級の魔剣がさ……私と彼、2人分あるのよ」
腰の剣を抜き放つ。
その剣は魔力の青い光を帯びていた。
「……つまり、もう暗闇の魔法も、魔力付与の魔法も要らないの」
冷笑を浮かべて。
……ああ、彼女は僕のことが嫌いだったんだな。
だいぶ長いこと組んで、絆が出来たと思っていたのに。
それを思い知らされた。
そう、軽く絶望しながらも
さらに訴えた。
「でもさ、僕は火球爆裂の魔法や、電撃放射の魔法も使えて……!」
すると
「魔法使いの真価は、砲台としての運用方法じゃないんですよ」
清楚な雰囲気の聖女……純白のローブに身を包んだ金髪の神官リアが口を挟んで来た。
僕を見るその目は、汚らしいものを見る目だった。
「それだけだったらね、お金は掛かりますが、魔法の巻物を購入すれば代用が可能なんです。真価は、考えて貰うこと。そしてどうすれば目の前の事態を好転できるか、それを提案することなんです」
はぁ?
僕は考えて来ただろ?
色々アイディアを出したぞ?
例えば、
何個僕が
すると
「お前は何も考えていない」
吐き捨てるようにエゼルバードが言った。
「どこがだよ!?」
「……まず、骸骨兵創造の魔法!」
骸骨兵創造の魔法……生物の骨を素材として、骨のゴーレムを作る魔法。
習得するには魔術師の学院でお金を積んで、特別講習を受けないといけないんだよな。
その魔法を習得したとき、とても嬉しかったなぁ。
「それが何なんだ!?」
半分キレながらそう叫ぶと
「お前はその魔法を習得してから、敵を嬉々として殺すようになったよな!?」
……それの何が悪いんだよ!?
何の法律にも触れてないだろが!
魔物は殺す。
当然のことだろ!
そしたら、エゼルバードは言いがかりをつけてきた。
「お前が敵を殺すのは、骨が欲しいからだ」
そうだが!?
骨が無いと骸骨兵創造の魔法が使えないしな!
何も悪いことしてないぞ!
「……それが生命への冒涜だと考えないのですか?」
神官リアがそう、寒いことを言って来た。
何をモラリストを気取ってんだよ?
アンタだって敵相手にメイスで急所を叩くことはしてるだろ!
どうせ殺すんだから、あとの死体をどうしたって……!
すると、エゼルバードの隣……マオから口撃が飛んで来た。
「あなたが最悪なのは……追剥だとか邪教神官だとかが相手でも、行動方針が変わらないことなのよ」
心底見下した目で、僕を見てくる女戦士マオ。
……それの何が悪いんだ?
あいつら、真面目に働いて稼いでいる人間から奪ったり、幸せに生きている人間を邪神の生贄に捧げて私欲を満たしているクズどもだよな?
そんなもん、骨の供給源になってしかるべきだろ!
意味不明だ!
「それに」
さらにエゼルバードは言った。
ものすごい嫌悪感の籠った声で
「……変身魔法を覚えてから、お前さ……近隣の童貞少年の性癖破壊するのライフワークにしてるだろ?」
「しょうがないだろ! 僕は少年が好きなんだから!」
バン! とテーブルを叩いて主張する。
僕は変身魔法を習得してから、元の30才男性の姿を捨て、自分が思う最強の美少女の姿に変身し。
その姿で、10才から14才の少年の性癖破壊をすることをライフワークにしている。
少年の性の目覚めを担う女だからね。
姿かたちにはものすごく凝ったよ。
銀色の長い髪に、卵型の小顔。そして紫の瞳。
体型はスレンダーを基本として、胸は少々盛った感じ。巨乳と呼ばれないギリギリのライン。
設定年齢18才。
清楚系の最強美少女だ。
これは試行錯誤の末、辿り着いた最高の姿。
そんなお姉さんに、少年たちは女を教えて貰ったんだよ。
良いことだろ!?
一体それの何が悪いんだよ!?
「アンタのせいで、女の品位が下がるんだよ!」
マオがマジギレして僕を怒鳴りつけ。
「あなたの行いは全てが吐き気がします。法律の問題じゃ無いです。お願いだから消えて下さい」
リアが凄まじい嫌悪感を込めて僕にそんな暴言を吐いた。
……メチャクチャ言いやがって!
そうやって、僕がブチ切れていたら
「……あの」
そこに。
年齢14くらいの、背の低い少女が現れたんだ。
……魔術師の衣装に身を包んだ。
髪の色は栗色で、長い。
そして少し目付きが悪かった。
だけど
「ああ、悪かったなコユン」
「歓迎するわ。あなたならすぐ一流に……いや、一流になれるように私たちが指導してあげるから」
「ようこそコユン……我がパーティーへ」
皆、このちんちくりん女を歓迎していた。
温かく迎え入れようとしている。
……クソッ。
僕の居場所は完全に無いってことかよ!
くだらねーことでグチグチ言いやがって!
分かったよ!
出て行けば良いんだろ出て行けば!
……覚えてろよ!?
後で僕の力が必要になっても、二度と助けてやんないからな!?
この……天才魔術師のマギ様を切ったこと、後で散々後悔しろ!
僕は怒りとともに席を立ち、二度と戻んねえよと心で吐き捨て。
酒場を出て行った。
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