第8話  死のラブレターその6

「先生…ちょっと、お腹下しちまったんでトイレ行ってきていいですか?」


3限目、国語の授業中だった。


 眠くなってきた来たので、思い立ち、先生に申し出ることにした。


「六道くん…最近たまにあるねぇこういうこと…。 なにかのアレルギーじゃない? いいよ行ってきな。」


「はは、そうかもしれないっすね。」


国語教科担当の初老の教室、尾形オガタは快く許可してくれたので、オレは、足早に廊下を出た。


 扉を出る途中、こちらを亜木キサロがじっと見ていたので、オレはみんなにバレないよう、一瞬だけ瞬きをして合図した。


 廊下に出たオレは、そのままトイレには向かわず、階段を登り屋上へ続く扉の前まで来た。 


 当然だが、屋上へ続く扉には鍵がかかっている。 


「はぁ〜ダル。」


オレは思わずため息をついて、あらかじめポケットの中に入れといた。 ビー玉を握った。


 するとビー玉は、瞬く間に屋上の鍵へ姿を変える。 オレはその鍵を使って、扉を開けると。 今度はその鍵が再び、ビー玉に戻る。 


 オレはそのビー玉を拾い上げてから、扉を開いた。


一面青空で景色が染められている。学校の屋上は、日が差し込み、ポカポカと気持ちの良い気候だった。


 それに、今だけは、体育の授業もなく、この場所は、飛んでいる鳥と、たまに上空を進む飛行機の以外で音のするものは、一切ない静寂だ。 


 まさしく、狙い通り今ここは絶好の昼寝場所と化している。


 オレは持っているビー玉をなくさないように、胸ポケットに入れ、念の為、屋上に誰も入って来れぬよう、元通り鍵を閉めた。 


 頻繁にここにくるたびに、オレは今は誰も使っていない倉庫を私物化して手入れしている。 


 オレはその中にあらかじめ入れておいた。布団と、チョコレートを取り出して、贅沢に丁度屋上のど真ん中に布団を敷いて横になる。


 心地が良い…。 きっとこの瞬間は、人生で100番目以内には入るくらい幸福な時間だ。 


 オレはチョコレートを頬張り、ビー玉を取り出すと、そのビー玉は今度、お気に入りのアイマスクに変わり、日光を防いだ。


 お菓子も食べ、目への眩しい日光を防いだオレの心地よさは、最高潮に達している。


 そのおかげで、布団に入ってから、完全に意識を手放すまで、一分もかからなかった。



20分くらい立ったのだろうか…


 オレはひらひらと舞い、翠色に光り輝く蝶の大群が顔にとまったことで、起こされた。


 飛び起きたオレは、素早く布団から、飛び出て、アイマスクを外して、屋上からグラウンドを見下ろした。


 グランド内には、誰もいない。しかしよく目を凝らしてみてみると、ボランティア活動に使用するという名目で、校門の外に最近設置された、 違和感しかない掃除用具入れの前にいる、ウチの学校の女子生徒を見つけた。


 オレの予想通り、ソイツは生徒会長。斐川ヒミカだった。



 


 


 


 

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