第7話 死のラブレターその5
オレ達のクラスが学年集会が開かれるついたのは、他のクラスよりも早く、一番乗りだった。
一年のA組…まぁ名前通り、俺達のクラスはこういった集会やイベントの時は、まっさきに並ぶことが多い。 先に到着した俺達はいつも他のクラスの到着を待つ間、暇を持て余していた。
「なぁ、リクドウ。今日でてくる今学期の生徒会長を知っているか?」
案の定暇を持て余していたのか、隣に並んでいたクラハシが、ヒソヒソと耳打ちしてきた。
クラハシは、見た目通り、典型的なムードメーカーでお調子者だ、学校の成績はお粗末で、お世辞にも勉強はできないが、以外にも学校の出席率だけは、パーフェクトだ。コイツは、いつもこうやってオレ以外にも、所構わず話しかけている。 一見ウザそうに見えるが、空気感は誰よりもよめるのか、友達は学校内でも、かなり多いほうだ。 オレも別にこいつのことをウザイとか思ったこともなかった。
「さぁ、生徒会長か…1年もたってないのに変わったのか?」
そう聞き返すと、クラハシは驚愕した顔で口を開いた。
「なに言ってんだよ!! 一時話題になっただろう? 前の生徒会長が突然転校することになって、その代わりに逆に新しくこっちに転向してきた。 3年の女子学生が生徒会長をすることになったんだろうが!! 一時期その新生徒会長はもっぱら可愛いって噂で持ちきりだったじゃねぇか!!」
そうだっけ…。 やばいな、興味がわかないことは、すぐに忘れてしまう。 とにかく今は誤魔化すことにしよう。
「あぁ……そうだ…そうだったな。 そう言えば…。」
「お前って、ホントに興味ないことには、頓着ないよな…。アイゾウのやつも、お前だけは、不気味で近づきたくない。 ていう気持ちが今ではほんのちょいわかるぜ。」
「なんだと?そうなのか!? おい、お前もオレの事を不気味だと思ってるのか?」
「あぁ……いや…すまんオレもそう思ってるわけじゃないんだ…これはその…言葉のアヤというか…。」
無視できない、言葉を詰めると、クラハシは、焦った様子で、訂正してきた。
心外だ…。 オレって一部の生徒からはそう思われているのか? 自分では、うまく誤魔化せていたつもりなのだが、たまにいる感の良いやつの前では、どんだけ演劇がうまくても、意味ないもんだからな。
確かに、俺達のクラスにはコイツ以外にも、もう一人こうゆう所謂コミュ強ムードメーカー的な奴がいる。 それがアイゾウだ。アイゾウはクラハシに似ているやつだが、ルックスのイケメンっぷりも相まって、アイゾウよりも愛されキャラだった。 アイゾウ自身もどんなやつとも打ち解け、騒ぐようなやつだったが、言われてみれば、オレにはあまり絡んでこない気がする。 オレはアイツのこと個人的には気に入っているのだが、そう言えば、アイツ一時期、未来予知レベルにカンが良すぎて、霊感があるんじゃないかとか言われてたっけ…。
「おい…おいって見ろよ…あれだぜ…スゲェだろ。」
考え事をしていたら、クラハシが肘でこちらを突いてきて、教壇を見るように促していた。 どうやらそうこう話していたり、考え事をするうちに、すっかり全クラス、が集まり、集会の準備を整え終わったらしい。
上の空で聞いてすらいなかったが、そう言えば、今校長か、教頭だかが、何やら喋っていたような気がする。
クラハシに促されるまま教壇を見ると、中学生にしては、背の高い、女子生徒が教壇のマイクの前へ立っていた。 確かに、世間的に見れば、絶世ともいえるほどの美少女だろう。 だがそんなことはどうでもいい、なぜならオレは今より幼い頃にソイツの顔を見たことがあったからだ。
「前の学校では、風紀委員を努めてたらしいぜ、でもあの身体で風紀委員は無理があるだろ。コレは噂なんだけどな。」
「おいやめろ…興奮するな。」
鼻息を荒立てながら、話しかけてくる。クラハシをまくし立ててくる。 コイツ…一応学年集会だということ忘れてるな。 こっちまで巻き込まれて先生に、怒られたらたまんない。
「生徒会長の斐川 ヒミカです。 えぇ 今学期から、この学校の校則について変更が━━━」
彼女は教壇の上で話しながら、まるで、何かを探しているかのように、周りを見渡した。おそらくそれは俺だろう。 そして案の定彼女は教壇で話している間オレを発見してから、ずっとこちらに目を合わせたままだった。
「おいっ、見ろ!!ソウスケ。 オレと目があったぞ!ずっとオレの目を見てる。」
クラハシが何やら叫んでいたが…。そんなことはどうでも良かった。 こちらを睨み続ける、あの女の目には見覚えがある。 あの液体もラブレターの真意も最近あった違和感の正体も、どうやら完全に推測はあっていたようだ。ようやくその答え合わせができた。
へぇ 斐川ねぇ。 その名前にも聞き覚えがある。どうやら『あれから』もらった名前をちゃんと名乗り続けているらしい。 心底感心だな。
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