第6話 死のラブレターその4

ムッキーっと激昂する福沢を見るとなんだかアホらしくなり、さっさと教室に入ることにした。 


 手持ちの革製で出来た黒いオーダーメイドで新調したバックから、殆ど自分の手で、開かれたこともない新品同然の教科書を取り出した。 


 入学から、もう半年以上立っている。 みんなはきっとかの教科書を使って普段から勉強したり、授業を聞いたり、しているのだろうが、オレは誰にも知られず持っている異能いのうを利用するおかげで、舐めた内容しかしないむかつく退屈な授業を受けなくともすむ。 誰にもない小さな幸福といったところだ。

 

 ふと、その教科書を机の中にしまおうとしたが、その時その机の中から、赤い液体が滴っていることに気がついた。血のような色と透明度の液体だが、血ではない、明らかに香水ににた、頭痛を誘発する刺激臭をともかく周りには気づかれ内容に手早く処理しなければならない


だが、焦る必要はない。オレはゆっくりと学生服のポケットの中に手を突っ込んだ。


 ポケットの中には、登校時間の時に拾っておいた。小石が入っている、オレが、軽く念じると、一瞬の間もなくソレは新品の雑巾に姿を変えた。


 誰が…こんな事をしたのか…その液体は何なのかは、なんとなくは理解できた。憂鬱になる…鬱陶しい。それは古くから続く因縁が巻き起こす、新たなしがらみを意味しているからだ。


「おい…、六道? 何ゴソゴソやってんだ? もう時間だんだぞ?」


 背後から聞き慣れた声がした。 この声は伊達だな。

 そう思いそちらを振り向いて見ると、案の定そこには、こちらを不思議そうに見つめる。 このクラスの学級委員長の伊達 農事ダテ ノウジと、ふざけたお調子ものの倉橋 島太郎クラハシ シマタロウがいた。

 

伊達は、いかにもガリ勉で、見た目も、銀縁の丸メガネをかけた、ガリガリの小柄が特徴的だ。 クラハシの方は茶髪刈り上げの、高身長で、まさにお調子ものといったやつで、度々、教師に怒られている姿を見るようなやつだ。

 

 二人は、何から何まで対象的なやつなのにも関わらず、なぜか、いつも一緒につるんでいるのを見かけ、仲も良さそうな奴らだ。


「テメーなんか、隠してんのか? 見せて見ろよ。」


そう言ってクラハシはちょっかいをかけてきた。 いつもなら、多少なりともじゃれてもいいが、今は不味い。 この液体を血とでも誤解されたら、えらいこっちゃ。 なんとか誤魔化さないとな。


「あぁ……やめろよクラハシ! ほら、これだよ、ラブレター。 隠すに決まってんだろ?オレがもらった事はみんなには…。」

 

「「おい、マジかよー!!」」


「」


誤魔化すために、なんとかラブレターを、見せてやった。どうせ、かくしていても福澤がマヌケをやって、うっかり口を滑らせるだろうからな。でも、それは逆効果だったようだ。

 二人は、オレの声も聞かず、いきなり驚愕し叫びだしやがった。 教室にいる全員はもちろんの事、もう準備を済ませた何人かの生徒も、オレの方を気になっている様子で、見てきた。

 

 「なんで…オレももらった事もないのに、お前が。」

 

 口をあんぐり開けながら、伊達は、吐き出すように、そういった。

 ソレを聞いたクラハシはゲラゲラ笑い声を上げて嘲笑する。


「バーカ お前みたいな、性根、根暗野郎より、よっぽど、ソウスケのほうが顔、美形イケメンだし、気味悪だけど、お前よりよっぽど可能性あるわ!」


「何だとぅ? テメェ」


前言撤回。 オレははじめて二人の喧嘩をみた。 やっぱり気が合わねぇヤツラ通しは喧嘩をするらしい。 ともかくうるさいから、オレも早く廊下に出よう。


「何かあるかもしれねぇーし…一応いくか…。」


「何かあるかもしれねぇーし…一応いくか…。」


オレは意図せずそう呟いてしまった。 


慌てて周りを見渡したが、聞いている人間は誰一人いないようで、正直ホッとした。 最近平和ボケが多くなった。気がする。

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