第2話 フィクサー
「それで……頼みたいことがまだあるんだろう?」
抹茶ケーキと紅茶を2人分テーブルに運んで来たタベタロウは、そうオレに訪ねてきた。
「……あぁ……暫くは厄介事を頼むことになる…いいか…?」
タベタロウは紅茶を口にし、しばしの沈黙のあとある提案をオレに持ちかけた。
「いいぜ……ただし条件がある…。 交渉だ。」
「なんだよ…。」
嫌な予感がするが、オレはタベタロウの提案を聞くことにした。 頼れるとこはそう多くないから。タベタロウはまた少しの間沈黙し、もったいぶって紅茶を喉に流し込んでから、口を開いた。
「俺達『フィクサー』復活」
「いやいや…待て待て」
タベタロウ意図を理解したオレは、狼狽えてソレを拒否した。 だがタベタロウはソレをオレに赦さなかった。
「いや…待たない…いいか落ち着け。弱気になるな!」
「ムリ!絶対ムリ!!もうBOSSもアルテリアもいないんだよ!オレたちは『死んだんだ』!!」
「だが、オマエがいる!!No.2であるオマエがな。」
タベタロウは必死に拒否反応を見せるオレを諭そうとしてくる。
「いいか…誰でも、一度自らで選んだんだ『運命』からは逃れられないんだよ!!誰が死のうが関係ない!!」
「ムリだ…違うよだって僕たちは自らで『フィクサー』を選んだんじゃない。 ただBOSSと運命をともにすることを選んだんだ。 『フィクサー』としてのオレたちはとうに死んでるんだよ!!」
オレは瞳に涙を浮かべながら、タベタロウに訴えた。 しかしタベタロウはそれでもオレの肩をがっしりと掴み、まっすぐにオレの瞳を見て、説得する。
「そうだ…だけどオレたちはだけは死んで全て終わらせるわけにはいかない…。 BOSSがやり遺したこと、やりたかったことを引き継がないと。『
タベタロウは吊るされた女の方を親指で指して、言葉を更に続けた。
「運命からは逃れられない。 あの女はその証拠だ。 結局アレとオマエの関係も過去からの因縁によるものなんだろう? コレはキッカケだ。 これ以上塞ぎ続けてたら、取り返しのつかないことになる。 」
「タベタロウなぜ…そんなに…?BOSSがいない、状態で復活しても僕たちがやれることなんて、ただの厨二病のおままごにしかならんぞ?」
タベタロウは立ち上がりオレに背を向け、閉じたカーテンから、外を見ながらまた言葉を吐いた。
「凡人…。 ふつうの人間ならな…。 あいにくオレたちは普通じゃない、各々が『最強の魔導士』、特にオマエとアルテリアの
正論だ…。その事実と代償から逃げてきたオレは俯くことしかできなかった。 そんなオレを尻目にタベタロウはトドメ最期の説得を試みる。
「みんなとは…連絡をとってる。 さっき、今回の事も話した。 みんな…お前のためにここにくるって…。」
「え?」
衝撃の一言だった。
この言葉でオレの心は完全に堕ちていた。 タベタロウはソレを知ってか知らずか、オレの手を取り慰めるように言葉を続けた。
「オマエが持ってきたコントラバスの楽器ケース、言われた通り、すぐ中身見たよ。 オレの弟には見せてないがな。今ベッドで寝かせてある。 ずっと縋るようにお前の名前を寝言で呟いていたよ。
なぁ…… お前はソイツを助けるために此処に来たのだろ?わかってんだよ…。 お前がここに来た本当の目的こそ『フィクサー』の復活だ。そうだろ?」
オレは言葉を続けたままで震えるオレの手を握るタベタロウの手を払い、冷めた紅茶を喉に流し込み立ち上がった。
決意はとうに固めていた。覚悟も…
「タベタロウ…わかったよ…オレたちは深淵の底に蠢く闇だ。 真っ暗で孤独な、誰も知らない暗闇、力を振るう代償さえもチカラでねじ伏せる。 俺達なら可能だ。 なぜなら…。」
「ソウスケ…お前が黒幕で、オレたちがフィクサーだからだろ?」
「そうだ…今日からは俺がフィクサーのBOSS…タベタロウ頼みを聞いてくれるか?」
タベタロウはまるで道化師のようにニヤリと笑い立ち上がった。 そして女を指さしていった。
「もちろん…オレ達の完全勝利のために全てをかけてやる…。たがそれには情報がいる…。 あの女のこととお前に起こったことを教えてくれ。」
「
オレは学生服の内ポケットから、ある『手紙』を取り出し。タベタロウに渡した。
「なんだ?コレ」
「死のラブレターだ。 十二日前全てはここから始まった。」
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