第7話 吐き気を催すような気持ちの悪い夢


     『その笠を乗せるのは』


 2024年6月28日

 私は心地の良くない目覚めとともに、自分が背もたれのない丸椅子に座っていることに気付く。ここはどこだ。ソファで寝てたはずだ。そっと手を開いて目線を下に降ろす。案の定、私は『動くな』と書かれた紙を握っていた。


 これなら首や、ちょっとした手足の動きなら大丈夫なはずだ。以前『微動だにするな』という助言を得たことを思い出した。

 目の届く範囲を見渡すが、周囲は際限のない暗闇が広がっている。そこに何が見えているのかさえも良く分からない。見ようとすればするほどに引き込まれる暗さ。そのせいで、見たくもない目の前の光景が際立って見えた。


 黒い棺を中心にして、それを四方から囲うように置かれた花。棺の横には膝をつき、項垂れ、泣いている男。その姿は酷く無様なもので、喪服はしわだらけでぐちゃぐちゃ、ネクタイは床に放り出されている。


 そいつに声を掛けてはいけないことは馬でも鹿でも、仰丸でも分かる。そいつは見たところ凶器のようなものも持っていないし、殺した相手のことを想って泣くサイコパスでもないようだった。

 真剣に故人を想って、というよりは、今はその人のことしか考えられないような執心を感じる。


 まるで物を乞うかのように情けなく伸ばした手は、細くて骨ばった色白の綺麗な手を握っていた。男はその手を握って、決して離さない。力ないその手は、決して男の手を握り返してはくれない。そいつ自身もそれは分かっているようで、ただ縋るようにしてその人に触れているだけだった。

 男は泣いている間も、項垂れている間も、何かをぶつぶつと発していた。


「…なぁ。でも…たくない…。一緒に…に…たかった」


 メンタルが崩壊して全てがどうでもよくなっているようだ。死にたいとでも言っているのだろう。誰のためにもならない自己犠牲を払うことに、意義を見出すからそうなる。自分が払う犠牲にどれほどの価値があるかを無意識に考えてしまう、そうでもして自分を守る壁を作らなければ自分を保てないようだから立ち直れない。

 私はその男に蔑んだ目を向けることしかできなかった。


 この状況で新しく知ることはない。そう思った直後、私の頭に割れるほどの激痛が走った。その場に倒れ伏してしまいそうになる痛みを感じて気付いた。

 私は首から下を動かすことができない。だからその場にうずくまることもできない。きっと今の私は、苦悶の表情で椅子にきちんと座っている。少しの動きは看過されるのかと思っていた私が馬鹿だった。そもそも微動だにすることができない体に、必要以上の助言をする必要がない。

 私は自分の能力の癖を分かっていた。分かっているからこそ憎いし、屈辱的だ。

 私の視界、脳内が霞んでゆく。私が招いた結果なのか、あの男に何かされた影響なのかはわからないが、頭が真っ白になって記憶が塗り替えられていく。この男の気持ちの悪い記憶に。




 2021年8月7日

 始めはほんの気の迷いだった。本当に些細な出来事から始まった。


 閉じたはずの冷蔵庫が開いていた。鍵を閉めたはずのドアが開いていた。こういうことは、誰にでもなじみ深いことのように思う。

 俺にはこういう不具合のようなことが、ある日を境に日常的に起こり始めた。だがこれに対して幽霊の仕業だとか、そんな不敬なことは絶対に言えない。


 これを引き起こしている何かは俺の味方なんだ。俺と深夏のために尽くしてくれている。俺が思いついたことに自信が持てないとき、それは偶然を装って俺に報せる。

 その選択は間違いではない、またはその選択は間違いであるというように、俺の迷いに反応してお告げをくれる。


 暇を持て余した俺は、深夏に何でもない連絡をした。よくは覚えていないが、その日行った店だとか、そんな話を振ったような気がする。

 三十分経っても返信が来ない中で、俺はだんだん待っていることが退屈に感じ、風呂でゆっくりと時間を潰すことにした。


 日中の疲れを取ろうとして、湯舟にゆっくりと浸かる。考えることは深夏からの返信である。部屋に戻る頃には、最後の確認から一時間が経過していた。

 しかし、改めてスマホの点けても返信の通知はない。深夏は、大学で楽しくも忙しい毎日を送っている。きっと今は既読だけは付けて、後日謝罪のスタンプとともに返信が返ってくるだろう。俺はそう思い、深夏とのトーク画面を開く。


 するとそこには深夏からの既読どころか、俺が送ったメッセージすら無かった。


 返信が来ないのは不具合だったことに納得した俺は、再度同じメッセージを打つ。打ち終わるというときに、開けっ放しの部屋の外から音が聞こえる。

 その警告音は冷蔵庫からだった。水を取るために開けたが、確かに閉めたはずだった。しかも見に行けば、冷蔵庫の扉は全開だ。


 流石におかしい。そう思った。


 たとえ閉め忘れたとしても、内部の光が漏れ出るくらいが現実的だ。アプリの不具合といい、何かが変だ。俺の行動が邪魔されているように感じる。


 ある人に言われたことがある。

 『不思議なことが起きたとき、それを霊的存在のせいにしていけない。何故なら、その現象が有耶無耶になってしまうから。自分の手が届かない存在のせいにして、意味があるか分からないようなまじないをする』


 『自称霊能者は霊だから、神様だから、その現象に説明がつくだとか。説明のつかない現象を、説明のつけられない存在のせいにして成り立つわけがない』


 『必ず不思議なことには理由がある。そして絶対にその存在がいかに異常でも、それ自体を根拠してはいけない。説明づけるのはそれを体感したその人自身の役目だ』


 俺はその人には多分一度や二度しか会ったことがない。恩師と呼んでいいか分からないその人の教えは、今の俺の心理状態を支えていた。しかし、深夏に連絡が取れない以上、それを心を決めたところでできることはない。俺は時間を置いて判断することにした。


 二日後、深夏から連絡があった。

 よくよく考えれば、当時は七月の終わり。大学生が一番忙しい時期に連絡した俺がおかしかった。このとき俺は変に身構えていたことを馬鹿馬鹿しく思い、心のガードを下げようとしていた。

 しかし、何か直感で思い直し、これから何かが起こる可能性に警戒した。


 そんな俺の不安とは逆に、良いことばかりが起こっていった。

 行くかどうか迷っていた場所になんとなくで行ったら深夏が居たり、深夏を誘うか迷っていたときに、客の会計と服の数字が一緒だったことに偶然性を感じて、なんとなく誘ったら来てくれた。

 こういうことが一度や二度じゃなく、毎日起こった。


 俺はすっかり警戒を解いていた。この偶然は俺を応援していると確信した。この偶然は俺と深夏の周りだけで起こっている。

 そして深夏にも同じことが起こっている可能性もある。たまたま行った場所に俺が居たり、何か偶発的なことにきっかけを感じたと思ったら、俺から連絡が来たかもしれない。


 俺は何をしても、深夏に関連することなら何でもうまくいく気がしていた。

 案の定、ドライブの誘いにもOKをもらった。


 俺が迎えに行くと、やや疲れ顔の深夏がこちらに歩いてきた。助手席に乗り込む深夏に心配の言葉をかけたが、大丈夫の一点張り。


『ほんとに大丈夫?今日はドライブ行くのやめとこうか?』


 などとは、口が裂けても言えない。俺は引くに引けなかった。

 ここで遊べなかったとすれば、偶然誘ったドライブがなかったことになる。偶然に従った結果、深夏と離れる結果になってしまう。この悪い流れに従ってはいけないと思った。

 しかし、もしかしたら、偶然深夏を家に帰したことで何かがあるかもしれない。不純な思いは隠したまま、更に心配の言葉をかけた。


「疲れてるよね?体調悪そうだけど」

「うん、ちょっとね」

 俺は一瞬のうちに散々迷ったが、その日は深夏に帰るように促した。


「今日は帰った方がいいよ。また他の日に行ければいいからさ」

「いや大丈夫だよ。ちょっと頭が痛いだけだから」


「今日無理して悪化したら大変でしょ。なんかあったら連絡してくれていいから、今日は家でゆっくり休みなよ」


 深夏はちょっと残念そうにしながらも、ありがとうと言って家に帰っていった。俺はこれが良い方向に向かうことを願った。


 結果的に、深夏を家に帰したのは大正解だった。

 深夏は熱があったらしく、帰ってすぐに寝たみたいだった。連絡が来たのは日をまたいでから。数日は安静にして過ごすそうで、ドライブも元気になってから行く約束をした。俺はやっと一息つくことができた。


 危ない橋を渡った。せっかくドライブまでこぎつけたのに、一瞬の気の迷いで台無しになるところだった。やはり偶然を装ったこのアドバイスは聞いておくべきだったと、疑念はなくなりついに確信に変わった。


 あの日から一週間、俺と深夏は改めてドライブに向かった。深夏の顔色は優れないままだったが、本人曰く病み上がりだからということだったので、その暗い表情を晴らそうと、俺はいつも以上に意気込んだ。


 いつも行かない店のドライブスルーに入ってみたり、通ったことのない道の景色を見たり、ドライブらしく海沿いの道を走ってみたり、普段は遠くて行かない有名店でお昼を食べたり、とにかく新鮮なことをした。

 少しだけど、深夏の表情も明るくなっているような気がした。どこか物憂げだが、楽しんでいる様子を活力に、午後の予定を考える。


 次はどこに行こうかと迷い、俺は深夏に話を振ろうとする。すると深夏が急に話し始めた。


「ねえ、どうしてドライブに誘ったの?」

 俺は深夏がこちらを見て話していることを、横目に気付く。


「どうしてって、それは遊びたかったからだけど」


「そうじゃなくて」

 深夏は俺の言葉を遮るようにして否定した。その声は少し震えていた。


「何をきっかけに、私をドライブに誘うことを決めたの?」


 まるで心を見透かされているようだった。どこかで負い目を感じているからこそ、それが気のせいだとは思えなかった。

 俺が偶然に起きたことをきっかけに、深夏に対してアクションを起こしていることは言えない。しかし、そんな俺の状況も分かっているかように、深夏は俺に謝った。


「ごめん、意地悪な質問して。でも知ってるんだ。私のことを考えてくれてるんだよね」

「…ああ、そりゃ体調くらい気にかけるよ。あの日は帰って正解だったね」


「執斗はドライブに行きたかったのに、私の体調を考えて連絡するの控えたよね」


「私が課題で忙しいときも連絡するのをとどまってくれたし、私と遊びたくても無理に誘うことはしないし、この前はたまたまゲームセンターであったけどね。」

 深夏が俺に笑いかける。その笑いは乾いたように聞こえた。


「でもそれだけじゃないよね」


「たまたまメッセージが届いてなかったから、偶然冷蔵庫が開きっぱなしだったから、お客さんの会計と服のロゴの数字がぴったり同じだったから、ふと行ってみようと思ったから、ふと頭に浮かんだから、ちょうど親が休みだったから、こんな時に限って私が体調を崩したから、私がまだ体調が優れないから」


「偶然に従ったら偶然が起こった。普通ならそんなことありえないよね」

 俺は車を路肩に停車し、深夏の目を見て問いかける。


「…何でそんなことを知ってるんだ?」

 深夏は疲れた目をして微笑んでいる。


「信じなくてもいいって言っても信じてくれるんだろうけど、今から話すことは私の問題だから。気にしなくていい」

 深夏は、俺の問いに答えず全く別の話を始めた。


「先月から私の夢の中に変な動物が出てくるの。動物と言っていいのかわからないけど、人ではない変な形、まあ夢だから。動物は私にチップを渡してきた。私、明晰夢なんか見れないから、何の疑いもなく受け取っちゃった」


「その日から私の部屋に何かがいるの。全く見えないからどこにいるかも分からないんだけど、私に話しかけてくる。賭けの時間だって。その後も淡々と説明してきたの、賭けの内容について。それは」


 俺は次に放たれた深夏の言葉に、茫然自失となる。


『佐藤執斗が偶然に従うかどうか』


「その何かがずっと話してるから、どういうことか分からなくて困ることはなかった。その後、たった今、佐藤執斗がメッセージが送信されない不具合と、冷蔵庫が開いてることに偶然性を感じて、私に連絡を取るのを止めたと言われた。けど実際にこの目にするまで信じられなかったんだ。」


「執斗にたまたまゲームセンターで会ったでしょ?あれから家に帰ったら次は、佐藤執斗がふとした思いつきに偶然性を感じて、ゲームセンターへと向かったって言われた」


「その後も何回も何回も、執斗のことについて言われた。執斗から連絡が来たときも、執斗が連絡するのをやめたときも」


 俺は寒気がした。自分の行動が筒抜けだったってことに嫌気がさして、正直これ以上そんな話は聞きたくなかった。


「私もね、ふと夢のことを思い出したの。あのとき渡されたチップは何枚だったんだろうって。片手に収まるくらいだったかな。私のチップがそろそろなくなる頃かなって思ったとき、執斗とドライブに行く予定だった日かな。またあれが話し始めたの」


「お前が賭けているのはお前の足だって」


「私血の気が引いて、すごい焦ってたの。まさか自分自身を賭けているなんて思わなかったから。でも執斗は待ってるから、準備を済ませて部屋を出ようとしたら、あれがまた話しかけてきた」


『佐藤執斗は、深夏の体調が悪いことに偶然性を感じて、家に帰すだろう』


「知っての通り、私のことを心配して、家に帰してくれたよね」


「違う…俺は今までの因果が崩れて、深夏と離れていくことになると思ったから、最初は…」


「分かってるよ。最初は偶然が呼んだドライブを否定することが、今までと逆のことを起こすかもしれないって思ったんでしょ?」

 まくし立てるように話す俺を宥めるように、ゆっくりと話す深夏。


「で、帰ってから言われたんだ」


「偶然なんてものは存在しない。全て見せかけだ。偶然というのは用意されてはじめて成立する。俺とお前は対等な相手のようで、まるで違う。お前はお前自身の賭けに溺れている。お前がギャンブラーだとするなら、俺はディーラーだ。彼は俺に操られた黒にしか入らないルーレットの玉だよ、って」


「何で今になって言う気になったんだ…?」


「きっと巻き込んじゃうと思うから。私のチップは残り一枚。このドライブの最中に、私はチップを使い切ってしまうと思う」

 深夏は全てを諦めたように、怖がった顔もせず、手も震えていない。


「でも、そんなの横暴だろ。深夏は賭けをするなんて言ってない」


「そんなの私も考えたよ。拒否されるから夢の中に出てきたんじゃない?」

 窮地に立たされても、深夏は合理的に物事を俯瞰していた。


「俺は…絶対に諦めないぞ…」


 俺は絶対に深夏のことを助けたかった。そんな意味の分からない賭けをやらされて、しかも俺のせいで負けそうなんだ。絶対に深夏のことを傷つけさせてたまるか。

 強く握ったハンドルから鈍い音がする。


「要は俺が偶然に従わず、自分で運命を決めればいい!そうだろ!」


 俺はアクセルを踏み、ドライブを再開した。絶対に傷つけさせたりしない。深夏から足を奪うなんてことさせない。俺から深夏を奪うなんてこと、俺が絶対にさせない。


「いやいやいやいや、別にお前から奪おうなんて思っていないさ」

 響くような重い声が俺の耳元で囁いた。


「良く思い出せ。お前は俺が用意した偶然に従った結果、何が起こった。良いことしか起こらなかっただろ?こうしてこいつと楽しいドライブをしているじゃないか?」

 俺は深夏の目を気にせず、声を張り上げる。


「俺に良いことが起こっても、深夏がリスクを負うなら意味がないだろ!深夏に何もするな!リスクなら俺が引き受ける」

 俺は今まで甘い蜜を啜っていた自分への怒りを、そのまま奴にぶつけた。


「違う違う違う違う、これだから信仰心だけ一丁前に強い人間は。お前は本当に愚かしいな」


「今まで偶然を装って、お前を深夏に近づけてやったじゃないか。いいか?お前が偶然何かをしたことで、深夏に近づくことができるんだ」

 トラックが、車線を外れて目の前に飛び出してくる。


「これで大好きな深夏に寄り添えるぞ、よかったなあ。嬉しいよなあ。お前は偶然飛び出してきたトラックを避けるために、右にハンドルを切る」


 俺の視界はトラックに覆いつくされた。このまま死んでしまうのか。深夏だけでも助けなければ、という無謀な思いをただ思うだけ。俺は頭が真っ白になった。


「大丈夫だよ」

 深夏の手が俺の目を覆った。


「執斗は巻き込まないっていう約束だったから」


 そこから俺が覚えているのはトラックがぶつかった強い衝撃だけ。それ以降のことはお見舞いに来た母に教えてもらった。俺が運転した車は助手席だけが潰れていたらしい。深夏は生きている。しかし、トラックに押しつぶされた両足は、酷く損傷していて切断するそうだ。


 俺がハンドルを右に切ったからだ。咄嗟にハンドルを切った。しかし左には乗り上げられなった、仕方なかったと、この葛藤を終わらせようとする自分を許せず、しかし、それ以外にそれを終わらせる方法もなく、自分の無力さにただ泣いた。


「深夏…」


 深夏のお見舞いに来た俺は、その虚ろな目を見て何と言っていいのか分からなかった。俺にはただ頭を下げて、謝ることしかできない。俺には悔し泣きをする権利などないのに、深夏を救えなかったことが悔しくて涙が止むまで頭を下げ続けた。


「いいよ。謝るのは私だよ。巻き込んでしまったから」

 いつも通りでいい。それだけが深夏が俺に望むことだった。


「分かった。いつも通りにするよ。何かしたいことがあっても俺が手伝ってやる。大丈夫だ、死ななかったんなら何だってできるよ。深夏の足になってやるさ」



 俺は本当に愚かだ。この期に及んでまだ深夏のヒーローになれると思っている。



「腕にはなれる?」

 虚ろな目をした深夏が俺にそう言った。



「次は腕だってさ」

 俺は深夏が胸に抱いた手を握ることも、抱きしめることもできなかった。


 深夏は死んだ。

 手も失うことに耐えきれずに飛び降り自殺をした。皆はそんなこと知らないから、足を切断した事実に絶望して、この世を去ったと思っている。


 ふざけるな、もう深夏のことを本当に知っているのは俺しかいない。深夏の両親は、俺のことを責めずにむしろ気にかけている。深夏の兄は俺のことを思って、葬式の間は俺に付き添ってくれた。俺の母は俺にとにかくゆっくり休むように言って、決して責めなかった。トラックの運転手は俺のもとまで来て土下座をした。


 どうして俺ばっかりなんだ。どうして皆深夏に目を向けない。おかしなことがあるじゃないか。俺が足になってやらなかったのに、どうしてあいつが飛び降りられるんだ。


 俺は深夏の兄に背中をさすられながら、棺に縋るようにして泣いた。恥も外聞もない。皆が俺のことしか見ていないとしても、俺だけは深夏のことをずっと見ている。

 絶対に忘れない、このことは絶対に。

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