第18話 楓さんのはじまり

 私、倉持くらもち かえではごく普通の一般的な家庭で生まれ育った何のしがらみもない普通の女の子だ。


 今年で16になり、私の人生で一番楽しかった時期は保育園だったのかもしれない、でも楽しかった時間も急に無くなってしまった。

 保育園の年長組になった頃に急に総司と幸広が引っ越してしまい私が一番仲良かった子が急に居なくなった。

 

 引っ越しした当時はそんな事もあるのかと気にくわなかったが納得はしたつもりだった。

 だが総司と幸広の変わりは見つからなかった、総司は特別に頑丈だったようで私が軽く小突いてもなんともなかったのだが他の子にとっては私の軽く小突く程度で大泣きしてしまうような事だったらしい。

  なんでそんな事するのとお母さんに怒られた。


 私は初めて加減を覚えた、幸広や総司は特殊なだけで他の子はちょっと脆いのが普通なんだと理解した、小学生に上がってもそれは変わらない。

 周りに合わせるためになるべく自分の感情はあまり出さないように努力した、そうするとお母さんが喜んでくれるから。


 お母さんの勧めでピアノや塾にテニスなど色々な習い事をした、私は要領が良かったのか何でも習ってすぐに結果を出した。

 お母さんは喜んでくれた、お父さんは私の好きな事はないのか聞いてくれるが好きな物が良く分からなくなってきた、だってやればなんでも出来るんだから。


 小学生の時は習い事や塾が忙しくてあまり考え事をする暇もなく色々やっていた、友達と呼べる子もあまりいなかった。

 保育園の時みたいに無邪気に他の子供と遊んでまた泣かしたりするとお母さんが怒ってしまうから。


 高学年になった頃、お母さんとお父さんは夜に喧嘩するようになった、バレないように聞いてみると私の事で喧嘩しているようだった。

 

「あの子は天才なの!!」

「だからって子供なんだ!あんな心を殺して習い事をするのが健全なのか?!」


 お母さんとお父さんが喧嘩するのは私のせいだ、もっともっと頑張ってあ母さんとお父さんを安心させてあげないといけない。

 喧嘩の現場を見てから私は習い事をもっともっと頑張って結果を出し続けた。


 頑張って結果を出し続ける事が一番大事なのだと思っていたのに中学に上がった時期にお父さんとお母さんが別居する事が決まった。

 お父さんにどっちの家に行くか決めてくれと言われたが私は選べなかった。


「そうだね、楓は優しい子だから残酷な選択を楓に決めさせる事はできないね」

「わかんない!お父さんとお母さんを心配させないように笑っていられるようにって頑張って来たのに!!」


 お母さんとの話合いを続けた結果、私はお父さんと住む事になり、お母さんは楓の事になると冷静でいられなくなるから少しの間は別居して頭を冷やす事になったらしい。


「楓は何かやりたい事とかってないのか?」

「わかんない……」

「ちょっとずつ好きな事を見つけていこうな、お父さんと色々経験していこう」


 それからの私の生活は変わっていった、今まで頑張っていた習い事や塾などは全部辞めて自由な時間が増えた、ゆっくりテレビを見るようにもなった。


 正直何をしたらいいのか分からなかったけど同じ中学に通う子と話すようになって色々な話を聞いて、その会話自体が楽しいとも思えた。

 そうして過ごしているうちに1年が経ちクラス替えがありそれから総司と幸広以外の親友と呼べるような友達が出来た。


 小林こばやし 由紀ゆきだ。

 由紀は私と違って自分の好きな事に真っ直ぐだ。

 由紀はとことんゲームが好きなようでどんなジャンルでも違った楽しさがあるしゲームは自分で楽しいと思える事を突き詰める事ができる完璧で最強で究極な趣味だと言っていた。

 そこまで言われると私も興味が湧いてくる、だって由紀がこんなに笑顔で話してくれるのだから私だって昔みたいにこんな自然に笑えるようになれるかもしれないって思ったから。


 それからお父さんに相談してゲーム機を買ってもらい、由紀のおススメのゲームを教えて貰っていろいろなゲームをやってみる事にした。

 だけどお父さんが張り切りすぎていろいろなゲーム機を買ってきたりデカいテレビとか音響がどうだとか言って私のためにお金をかけてゲームをする環境を作ってもらった。

 その話を由紀に話したら羨ましがっていたし、やりすぎだよねって由紀と話して少し笑った。

 

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