第16話 楓の理想
楓を追いかけ幸広と俺はF級ダンジョンへと入場した、ダンジョンへと入ると少し湿気っている空気を感じた。
内装は洞窟タイプのダンジョンで岩に包まれているのだが全体的に湿っているように見える、洞窟の天井から水が1摘づつ滴っている。
光は洞窟タイプで良くある松明がありゆらゆらと青い火のような物が揺らいでいる。
「はぁージメジメして気持ちわりぃなぁ」
「ちょっと遅いわよ」
「んー確かココは……ジェルスライムはが出現するダンジョンだね」
「これをクリアすればD級だぜ、さっさとクリアしようぜ」
「先頭を歩くのは私よ、私より前には出ないでね!魔物が出たら私の指示に従ってちょうだいね」
「うす」
「わかったよ」
そう言うと楓はダンジョンの奥へと歩き出したのだが楓が装備している盾に付いているベルがチリンチリンと常に音が鳴っている。
このダンジョンの魔物を聞いた時にはあまり音は関係無いと思っていたのだが正直耳障りではある。
「なぁ楓、ジェルスライムは音で寄ってこないから良いけどうるさすぎないか?」
「そうなのよねぇ……ってなんで音で寄ってこないのよ?」
「あースライム系とかって耳とか目がないだろ?どうやって俺らを見つけて攻撃してくるとか考えた事ないか?」
「深く考えた事は無いわね」
「人型や獣型の魔物だったら音に反応してくれるんだけど、スライムとか目と耳で判断しない魔物は基本的に俺達の魔力に寄ってくるんだよ」
「じゃあただうるさいだけじゃない!!」
「まぁ……そうだなぁ、てか何がしたかったんだ?」
プリプリした楓が言うには魔物からの攻撃を自分一人に集中させその間に俺達に攻撃してもらう考えであったようで、基本的に音を鳴らして注目を集めるための盾だったようだ。
「ふーん、でも音だけで全部の敵に的にしてもらう事って難しくないか?」
「そうなのよ!だから冒険者学校に入って剣術を受講したのに教えてくれないし教材にもやり方が書かれてないしでしょうがなく考えた結果がこの盾よ!!」
「それなら良い感じの知ってるぜ、とーちゃんが良く使ってたの」
とーちゃんが使っていたのは声に魔力を乗せてそのまま広範囲に魔力をばら撒く感じと言えば想像しやすいだろう、魔物はどんな種族でも魔力に敏感なので基本的にそれで寄ってくる。
ただ寄ってくるだけであって楓の理想のヘイトを稼ぐと言うらしいがそれは出来ない。
なので声に魔力を乗せるだけではなく煽る気持ちを乗せないといけないととーちゃんは言ってた。
「だからとーちゃんは口笛とかでちょっとした範囲の魔物を呼び寄せてたかなぁ、んで俺が危ない時にはおちょくってとーちゃんに集中させてた……って感じかなこんなんで分かるか?」
「なるほどねぇ……ちょっとやってみるわ」
楓は俺の言ったように魔力を使った口笛を吹くと高音のキレイな音が鳴りダンジョンの曲がり角に隠れていたのかジェルスライムが2匹表れた。
「成功したわね……それでおちょくればいいのよね」
楓は初めての技術にもかかわらず一発で成功させたがおちょくる魔力と言うのがいまいちわかりづらかったようで、ちょっと手間取っていた。
「こんな感じかしら……
楓の言葉の魔力にジェルスライムは怒ったのか2体のジェルスライムは楓に向かってズルズルと這いずりながら近づいて来た。
「やったわ!!これよ!これが私の理想のタンク像よ!」
楓は喜びながらジェルスライムを引きつけつつ戦闘を開始した、ただジェルスライムは核となる部分に攻撃を当てないと倒せない魔物なので楓一人で2体の魔物を相手にしつつ剣で核に当てるのは難しかったようで俺達に指示を出した。
「ほら、私がひきつけてるんだから今のウチに後ろから攻撃しなさい」
「あいよ」
「う、うん」
俺と幸広は各自1体づつジェルスライムの背後に回り核に攻撃するとジェルスライムは溶けていった。
楓は理想の技を習得した事で大はしゃぎしていた、どんな勉強してきてもこんな達成感は初めてだわと叫んでいた。
「僕からするとなんでそんな事で理解できてそんな技が出せるのか分からないんだけど……」
「え?だってタンクって言うのはそう言うものでしょ?」
「だってとーちゃんが使ってたしなぁ」
「ああ、うん、そうだね。僕が間違えていたよ……規格外さを理解できていなかったよ……さっき……おばさんが言ってた……いや……うーん?」
俺は幸広が何を驚いているのか良く分からなかったのでとりあえず放置した、こういう時の幸広はぶつぶつ言いながら考え事するってのは理解したから放って置こう。
「幸広は何をぶつぶつ言ってるの?」
「たまにああなるんだ、放って置こう」
「そうね、私はちょっと感覚をならしておくわ」
それから俺達は幸広がこっちの世界に帰ってくるまで少し待ち戻って来た所でダンジョンの奥へと出発した。
途中で何よこの盾うるさい!と言って楓は盾をダンジョンに投げ捨てていた、幸広が言うには物を放置していたらダンジョンが吸収してくれるから問題はないそうだ。
まあ大丈夫なら良いかと思い俺達は奥へ奥へと進み始めた。
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