第10話

 亜門くんと別れエレベーターから降りると、さすがに幸広は来ていなかったようだ、それにしてもこの冒険者手帳ってのは便利なもんだなぁ、こういった便利グッズがあるってのは知ってはいたけどあんまし使わしてくれなかったからなぁ。


 幸広もまだ来ないようなので近くのコンビニで飲み物でも買っておこうと思いコンビニに入ると雑誌コーナーが目に留まった。


「へぇ……いろいろな雑誌があるんだなぁ、ゲーム雑誌は……ないな、ん?」


 冒険者特集号と言う雑誌が目につきペラペラと見てみる、秋葉地区最強冒険者Aランククランのメンバーに突撃インタビューに名を明かさないSSランク冒険者!?実在するのか?……へぇ冒険者ってのもランクがあんだなぁ、てかなんだSSランクで存在疑われるってゲームの設定かよ。


「こんな所に居た」

「ん?あぁ幸広か見て見ろよ面白いぜSSランクの冒険者だってよ、本当に居るのかねぇ」

「え?……あー、きっといるんじゃない?てか飲み物でも買いに来たんだろ?さっさと買ってダンジョン行こうよ」

「ん?ああ、それもそうだな」


 コンビニでの買い物を済ませ外にでると幸広がF級のダンジョンを見繕ってくれたそうなので何処に行ってもそんなに変わらないだろうと思い幸広に案内してもらう事にした。


 本日回るダンジョンは京島南公園、通称マンモス公園だ。

 大きな滑り台があり、それがマンモスのような大きさだからとか通説がいろいろあるようだ。


 それと時間があればもう一か所マンモス公園の近くにある小さな公園、通称ゲロ吐き公園、円盤が回る遊具があり強力な遠心力で数多の子供達にゲロを吐かせたと言われている忌々しい公園だ。

 ゲロ吐き公園に着いては嫌な思い出があるが今は語る事は辞めておこう。


「ゲロ吐き公園か……」

「あんましいい思い出は無いよね……」

「ああ……気を取り直してマンモス公園に行こうか」

「そうだね、ここからなら大体、真っ直ぐ行けば着くかな」

「道まではあんま覚えてないから頼んだ」


 幸広に先導してもらい俺達はマンモス公園へと向かう事にした。

 歩きながらこの道は通った事があるような気がするなーとか考えていると幸広から質問が飛んできた。


「ところでさ、勉強とかってしっかりやってきた?」

「さんすうは得意だぞ、かーちゃんが計算は大切だって言ってたからな」

「さんすうって……2×9にくは?」

11いい

「足しちゃってるね……9×4?」

「36」

4×9しく?」

89はっく

「総司くんさ、語呂で覚えるのは辞めようか」

「え?」

「少し……いや大分将来が心配になってきたよ……」


 幸広とわりかし得意なさんすうの問題を解いていると俺たちは目的のマンモス公園へと到着した。


「今度一緒に座学を受けようね?」


 幸広のこの笑顔を見ると嫌だとは言えない圧力があった、俺のさんすうは完璧だったはずなのに、どうしてだろう。


「わ、分かったから今はほら?ダンジョンがさ?ね?」

「はぁ……これは大変な依頼を受けちゃったかな」

「ん、なんて?」

「なんでもないよ、じゃあダンジョンの受付に行こうか」


 幸広と一緒にダンジョンゲートの方へと向かうと、そこにも綺麗な二階建ての建物があった、前回攻略したダンジョン同様1Fに木製の扉と受付があり2Fに買取所があるようだ。

 俺と幸広は受付を済ませ、マンモス公園のF級ダンジョンへと入場した。

 今回のダンジョンも前回入ったダンジョンと同じ洞窟タイプのダンジョンのようだった。


「このダンジョンの魔物は……ラット系の魔物が出るみたいだね、すばしっこい以外は特に特徴はないかな」

「ふーん、すばしっこいねぇ……でもよホラ、あそこに居るネズミは如何にも足が遅そうなのがいるぜ?」

「え?ファットラット?肉がドロップしたら高く売れるよ、珍味とされていて美味しいらしいよ多分」

「え?マジかよ、魔剣迅!!」


 俺が魔力で飛ぶ斬撃をファットラットに放つとファットラットは少ない動きで紙一重で回避したと同時に俺の顔を見て鼻で笑った。


「腹立つ顔で笑いやがった!?」

「ファットラットは動きは遅いけど回避能力が高いらしいよ……ってムキになったら狩れるもんも狩れないよ?」

「いやでも……くぅー、腹立つわぁ」

「んーじゃあ、まかせて……」


 幸広は前回使ったデカい針を左右の手に1本づつ持ち顔の前へと持ち上げ。


「起きろ四流しりゅう


 前回同様に糸に水の魔力が浸透していき。


四針糸しばりいと


 幸広が前回同様に針を飛ばし糸を魔力で操作したが前回と違って糸が黄色く発光しているように見えた。


「行け」


 幸広の投げた針がファットラットへ飛んで行きファットラットは幸広の投げた針を紙一重で避けて余裕そうにこちらを見た。

 余裕そうにしていたファットラットが何か異変を感じて逃げ出そうとしたがファットラットは何故か動かない。


「紙一重で避けちゃダメだよ、二本の針にも糸にも……糸に伝うも避けないと、じゃないと僕に縛られちゃうよ?」


 幸広が何をどうしたのかは良く分からないが俺がやる事は分かる、ファットラットへと歩いて近づき撲殺する事だ。


「オラァ!!さっきは腹立つ顔しやがって!楽に逝けると思うなよ!!」

「ピ……ピギュゥゥゥゥゥゥゥゥ」


 撲殺☆完遂

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