第15話

 血圧は毎日計り、毎日記録をつける。薬も毎日飲む。高血圧とは毎日、一生付き合っていかなければいけない病気なのだ。いわば一心同体だ。何をしていても、例えば旅行していてもふと、あっ血圧計らなきゃなんてことを考えたりもする。


しかし、そう考えるとこの病気は重い。かなり重い。癌の病気の重さに比べると、印象は薄いが、ボディブローのようにジワジワ効いてくる。最初のころは、気持ちが沈んだ。

今はそうでもない。何か、生活と一体化するというかなんというのだろう、自然になれるというか自然に付き合っていける病気なのだ。健康で生きていたころと遜色ソンショクない、むしろ気持ち的には健全化ケンゼンカしているようにも感じられる。不思議なものだ。


人というのは失うとその失ったものの価値を再認識する。だから、失った人しかその価値を評価できないのではと思ったりする。例えば、ペットの犬とか。飼ってはみたものの散歩とか毎日結構大変だな、とかまあ散歩コースで楽しいことはいっぱいあったが。みたいなことをつらつら日々思ったりしていて、ある日亡くなったりすると、とてもショックだ。しかも、その時がショックなだけでなく後を引く。ふと、犬のことを思い出すと、生活の一部が何かなくなっていて、喪失感ソウシツカンを感じたりする。居たときは夜中に鳴かれたり、めんどいことも多かったのになと思いだしたりする。


まあ、ペットの話はさておき、今は健康、血圧の話に戻そう。血圧が高くなると、血管にダメージを与え、器官を駄目にする病気になることが多い。特に頭の病気は要注意だ。急に起こったりするので、危険を伴ったりもする。また、人生に多大な影響を与えてしまう。普段気にしなかったことも、いざできなくなるととても不便さを感じたりする。例えば、歩行などだ。普段は息をするように、勝手に足が動いてくれて目的地へ行ったりするが、まあ、運動するときは多少気にするのかな。いざ、足が動かなくなると考えた場合、途端トタンに生活範囲がセバまってしまう。


自分の場合も、正常な血圧を失ってしまって、初めてそれが価値を持っていたのだと落胆ラクタンした。気にする必要のないことを気にするという負担について健康な時は、まったく意識できないのだ。


これから何十年か付き合っていく器官にはこのまま健康を保っていっていただきたい。そのための決意を今まさにしようかなと思ってみたりもする。どうすればいいのか、まずは考えることから始めよう。そうしよう。

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