Episode 04 梨花と千佳は。


 ――出会ったのは、令和元年の夏。



 僕が違法チケットの売り子で、警察から補導される少し前に、僕と間違われて補導されたのが事の始まりだった。僕と似ていたばかりに……それも似過ぎるくらいに。


 鏡を見ているような感じだから。


 違法チケットは多額なお金になる。シングルマザーのお母さんも喜んでくれた。叩かれることもなくなっていた。不登校でも怒られなくなっていた。不登校だから、これまで経験した以上の虐めに遭うことなく、安心な日々を送れそうだったから……でも、そのために怖い思いをした女の子がいることを知った。それが梨花りかだった。逃げようとも思った。


 ……けど、

  会うことにした。


 僕と同じ名字の刑事さんと一緒に、訪れたの、学園へ。彼女のいる学園へと。


 とても怒っていると思った。


 殴られるのも覚悟の上だったけど、怒っていたのは彼女のお友達の可奈かなで、彼女は怒らず許してくれて……お友達になってくれた。上辺ではなく、真のお友達に……


 それからの夏休みは、ずっと一緒だった。


 お友達とお出掛けしたのも、幼少期以来。ボッチじゃない日々だったの……


 きっと怖かったと思う。ずっとこの日々が続けばいいと思っていたから。それが、ずっと続けたいと思えた時に、もうボッチの陰はなくなっていた。日曜日の夕方から起きる不安。見えない明日に怯えなくなっていたの。梨花と可奈の温かな存在と、ポジティブな思想に変わってゆく、挑戦を起こす僕の心に。だからこそ執筆に挑戦。梨花がコンテストに挑戦していたから。そのコンテストの〆切をもって完結となった

『りかのじかん』……


 その時から、今度は僕が、梨花のような執筆をする。


 風が吹いても。雨に降られても。


 ……スーッと梨花への感謝の想いを胸に、駆け上がる少女の物語を綴りゆくの。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る