第2話 私達の作戦会議

「という訳だよマキちゃん」


「どういう訳なの優花」


我がクラスに転校生がやってきたその日の放課後、私はマキちゃんを連れて駅前の喫茶店に訪れていました。


「遂に……遂に始まりました………」

「私が最高の負けヒロインになるための青春の物語が!!」


「何回聞いてもバカみたい」


「真剣ですぅ!」



そう言いながらもちゃんと聞いてくれてるこの子の名前は小宮真希こみやまきちゃん。通称マキちゃん!

メガネをかけていて勉強が出来て、ツッコミも出来る!最高の親友!!


…あ、別にマキちゃんは変な考えで友達になった訳ではないですよ?たまたまね?たまたまです!


「それで?ならなんで今日は話しかけなかったの?」


「え?だって転校初日じゃん?1話じゃん?転校生くんにとってもキャラ増えすぎても困るじゃん?」


「何言ってんの?」


「だってだって~天城さんでしょ~?そして転校生くんの前の席にいた大葉くんでしょ~?」


天城玲奈あまぎれいな

我らが学級委員。黒髪ロングで真面目な堅物!

だけど私は知っています……先日学校に紛れ込んできた野良猫とにゃんにゃん言いながら戯れていたことを!!!


大葉亮太おおばりょうた

転校生くんの前の席に座っている元気なメガネの男の子!いつも変なこと言って天城さんやマキちゃんに怒られてる!ちなみにマキちゃんの中学の同級生!!いいね!


「てか転校生くん転校生くんって……名前くらい覚えてあげなよ…」


「………実は聞いてませんでした」


「はぁぁ???あんた今から好きになろうって男の名前聞いてないとかあるぅ??」


「面目ない……」


「ほんとに………あの人の名前は桜川翔琉さくらがわかける…らしいよ」


「さくらがわ…かける……っぽい!!ぽいぽいぽい!!」


「そう?」


「そんな気がする!」


「やっぱバカだ」



さくらがわ…いいね!「桜川くん!」だ!



「いやぁ持つべき物は頭のいい親友ですなぁ」


「……褒めても何も出ないから」


「え~?照れちゃって~…かわいいも追加しとくね!」


「あぁもうだから……それやめろ…」


マキちゃんは褒めるとすぐに照れちゃってかわいいんです。



でもそういえば大葉くんから言われても照れてない………むしろ怒ってる気がする……


ま!腐れ縁ってやつだろうね!!




「よし!そうと決まれば明日からだ!インパクト残してくぞ!」


「さいですか」


「なので今日は私の奢りです!」


「……いいよ別に。私が払っとく」


「いつも悪いよ…今日くらいはさ?」


「………今日が最後。次からは割り勘だよ」

「あんたの青春のはじまりに乾杯ってやつ?」


マキちゃんはそう言いながら伝票を持ってレジに向かった。めっちゃカッコいい……



「ねぇねぇマキちゃん!」


「なんですか……ってちょッ!?」


喫茶店を出るとすぐに私はマキちゃんに抱きついてぎゅってした。


「ありがと……ほんとに…」


「~~~ッ!!やめ…やめろ!!」


マキちゃんはすぐに私のハグを剥がして距離をとった。顔は真っ赤で少し怒ってます。


「……いいから!とっとと負けてこい!このバカ!」


そう捨て台詞を残しながらマキちゃんはひとりで駅に向かって行きました。


「まってよー!」


私はマキちゃんを追いかけるように走り、マキちゃんもなんだかんだ私を待っててくれて、仲良くふたりで帰りましたとさ……






「ハッ!!?」


「なにそのバカ面」


「今のもしかして……マキちゃんも負けヒロインになりたかったとか……!?」

「あ、だったら邪魔しちゃった!?ごめん!この後ひとりで泣きたいよね!?」


「このッ………!!!」


ゴッッッッツン!!!


「あぅ………そんな……なにも……全力でげんこつしなくても………」


「……うっさいバカ。ちょっとは反省しろ」


「ごめんなさい………」

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