第4話

「ずいぶん早いわね......」


 朝早くメリムに起きる前におきた。 というかばれるのが怖くて眠れなかった。 そして食事の用意をしておいた。


(寝てるところを見られバレたら一貫の終わりだ。 最悪そのまま突き刺されるかもしれない。 食事は向こうと変わらないな。 ただ魔力が使えないから、パンと果物、牛乳、チーズらしきものしか用意できないけど......)


「目玉焼き作ろうとしたけどこれどうやって火をつかうの」


「ここに、魔力を集める魔石があるの。 ここに魔力を込めると......」


 メリムがキッチンの横にある箱の下に両手をかざすと炎がでた。


「おお! 便利」


「本当に魔力も覚えてないのね...... 神剣にも大きなものがついてるでしょ。 これは小さいけど稀少なものなの」


「へえ」


「あとその服着替えたら、足とか縛ってるけどタボダボじゃない。 父さんのお古ならあるよ」


「い、いや、これは大切なんだ!」


「ああ、形見かなにか......  そうか記憶がないから、もしかしたらあなたも家族をモンスターに襲われたのかも、そのショックで......」


 そう悲しげに顔を伏せた。


(あなたも...... ということはメリムの両親は......)


 フライパンが暖まり、ジュウジュウと卵が焼けていい匂いがしてきた。


 そして、この世界のことを質問しながら、食事をとる。


「さあ、練習よ!」


 外に出る。 家の庭に傷ついた太い木がかささっている。


(剣の練習をしてたのか...... そういえば家に木剣があったもんな)


「まず、魔力をためることね。 人間にも魔力はあるから、それを、両手にだしてみて、こんなふうに」


 メリムは目を閉じ集中すると、その両手の上に光りが集まる。


「おお! 光る」


 それはすぐ弾ける。


「ああ! やっぱり長くはもたないか...... 集中して体の中に力を感じるのそれが魔力、まあ最初はなにも感じないから、練習していけばいいわ」


(......魔力、タコにもあるのかな?) 


 目を閉じ集中して体に意識を向ける。


(なんかあの暗闇の空間みたいに感じるな...... ん? これは)


 何か光のようなものを感じて、それを動かしてみる。 すると右手の方へ動き手のひらまできた。


「えっ!? 光ってる」


「ん?」


 メリムに言われて目を開けると、袖の上に光があつまる。


「すごい! 私のよりはっきりしてる。 強い魔力だわ! 最初から操れるなんて! それをイメージでなにかおこらせられるはず!」


「なにか......」


 光の球は特に変化しないで、消えていった。 


「なにもおきないね...... 魔力を操れる人は、その人独自の魔力を扱えるんだけど...... でもこれだけ長い間保てるのはすごいよ!」


「そ、そう......」


 ほめられていい気持ちになった。 それから何度も試す。 なにも起きないが魔力を作り出すことは容易になり、魔力発生持続時間は伸びた。


「じゃあ、剣に魔力を流してみて、神剣にもそれぞれ独自の魔力が備わっているの。 なにかわかるかもしれない」


「う、うん」


 剣を抜いて魔力を流してみる。 剣がほのかに光る。


「剣が光だした!?」


「あれを切ってみて! 私の練習していた棒」


 地面に刺さっている太い棒に剣をふるう。


 ガッ!


 棒に剣がくいこみ何とか折れた。


「おかしいな切れ味があがるわけじゃないのか...... それに魔力も発動した形跡もない。 剣の魔力もわからないわ」


 メリムも首をかしげる。


 とりあえず昼に家に戻り昼食を取ると、また外にきた。


「もしその剣が使えないなら、他の方法を考えるしかないわ」


「他の方法?」


「そう、魔力は使うだけじゃなくて、体内を巡らせて身体の強化もはかれるの。 みてて」


 メリムは目を閉じ木の棒の前にたつ。 体がほんのわずかに光る。


「やっ!!」


 メキッ!!


 メリムがなぐると木がへこんだ。


「おお! 簡単にへこんだ! そうかメリムが力が強いのはそれなのか!」


「そう。 私は魔力の変化がうまくないから、できるだけ魔力を体内に巡らす訓練をしてるの。 体内に巡らせられるようになれば身体強化ができて、かなり強くなれる。 私とトーマ二人ならあのアイアンクラブとも戦えるはず......」


 メリムが腕を組んで目をつぶり考えている。


(そうか、体内に巡らせるか......)


 木の棒のまえにたつ。 集中して全身へと魔力を流す。 


 バキンッ!


「あっ、おれた」


「えっ!?」


 試しになぐってみると木の棒が折れた。


「折れた!? 先がどっかにいっちゃってる! すごい力!!」


 メリムが驚いている。


(なるほど、こういうことか...... けっこう自然にできたな。 そうか、これ飛べるのも魔力を使ってるのかも)


「よし! これならアイアンクラブと戦えるかも!」


「えっ!? ちょっとまだ無理じゃないかな! せめて魔力を一つぐらい覚えてから......」


「正直、ほとんどの人は一つの魔力も使えない。 複数もってる人は聞いたことがないわ。 私は衝撃を一瞬大きくだせるだけ、二年もやってみたけど......」


(よく見るとメリムは腕も筋肉質だし、手のひらに豆がある。 かなり訓練したんだろう。 それならすぐに独自の魔力の習得は無理か......)


「無理せず引き返すならいってみよう」


「ほんと!! よし! 明日いってみよう」  


(恩もあるし、試して見るだけ試してみよう。 ダメなら逃げればいいんだ)


 少し不安だが...... そう思い曇り空を見上げた。

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