第5話

 メリムと共にアイアンクラブを探しに町をでた。


「ふぁ、それでどこにいくの」


(ちょっと仮眠をとったけど眠いな......)


「トーマが見たのは草原の近くの壊れた家よね。 多分木こりのドアンドさんの家ね。 アイアンクラブはその辺にうろついているの。 今は親類の家に身を寄せてるわ」


(それで家を捨てたのか。 服をもらってごめんなさい)


「そもそもモンスターってなんなの?」


「とにかく凶暴で生き物を見ると攻撃してくる性質をもつの」


「そうなのか、国とかは兵士を出してくれないの?」


「ええ、正直こんな田舎にまで来てはくれないわ。 他の国とも領土問題もあるから......」


 そう眉を下げ困り顔でメリムはいう。


「あそこ!」


 背の高い葉っぱが立つ草原が大きく揺れる。 地面を走る音がきこえ、こちらになにか高速で接近してくる。


「くるよ!」

 

 メリムがいうやいなや、草原から巨大なカニが飛び出てきた。


「うわぁぁ!!」


「トーマ! こいつは横にしか移動できないから正面にたって!」  


「わ、わかった!」  


 おれたちは正面にたち、剣をかまえる。


 大きなハサミがこちらを挟もうと迫ってくる。


「ふん!」


 ガキィィン!!


 高音の金属音が響くとメリムが剣でそれをうけていた。


(すごい! あんなデカイハサミを受けた!)


「と、トーマ、いまこいつを押さえてるうち...... この腕を斬って」


「わ、わかった!」


 剣に魔力をためカニの右腕の関節を切りつける。


 ガキッ!! 


 関節に剣が入る。


「うおおお!!」


 力任せに切り裂いた。 ハサミが宙をまう。


「やった!」


 ドォ!!


 次の瞬間、アイアンクラブの左腕のハサミがメリムを吹き飛ばした。


「あっ!」


 そのままメリムがそばに転がり動かない。


「メリム! メリム!」


 呼び掛けに反応しない。 近づこうとすると、カニはハサミでしつように攻撃してくる。


(ダメだ! 早くこいつを何とかしてメリムを! くそっ! くそっ!)


 「どけええ!! 邪魔するなあああ!!!」


 混乱してるおれは意識がもうろうとした。 その時何か声がする。


『うるせえな......』


「えっ? うわっ!」


 声が聞こえたとおもったら、空にいた。 


「このまま!」


 そして加速して剣をカニの頭へと突き立てた。


 ザシュ!!


「メリム!」


 おれは地面でバウンドすると、すぐメリムのそばにいく。


「うっ......」


(息はしてる! 早くつれていこう。 でもさっきなんか声が...... いや今はメリムが先だ!)


 すぐにメリムを背負うと町まで帰った。



「ごめんなさい...... 足を引っ張って」


 ベッドに横になりながら、目が覚めたメリムは申し訳なさそうに謝った。


 あのまま帰ると、町の人に助けてを求め、メリムは診療所にはこばれた。


「そんなことはいいよ。 お医者さんが言うには、打撲だからたいしたことはないけど、頭をうってるかもしれないから安静にしててって。 さっきまで町の人もきてくれてたんだ。 寝てたからかえってもらったけど」


「それで、あのアイアンクラブは......」


「わからない。 とりあえずメリムを町までつれてくるのに必死だったから......」


「そう。 ごめんなさい。 私が弱いから......」


「いいんだよ。 メリムが無事なら、おれも強くなったと過信して安易に戦おうとしたんだし......」


「おい!」


 扉があいて、さっきの町の人が入ってきた。


「ひっ! ビックリした! なんですか!」


「ああ、すまん! 大きな声を出して。 さっき道にアイアンクラブが倒れてたって、メリムたちが倒したのか」


 メリムと顔を見合わせる。


「戦ったけど...... 私は倒されて、トーマが」


「えっ? 確か、メリムに近づこうとしたのを邪魔されて...... 頭にきて剣で」 


 そのときのことは必死でよく思い出せない。


「アイアンクラブにこの剣が刺さってたんだと」


 そう剣を渡してくれる。


「ああ、おれのだ」


「すごいじゃない! アイアンクラブを倒してたのね!」

 

 メリムがベッドからおきあがる。


「動いちゃだめだよ」


「ああ、そうね。 でもあいつを倒せた。 これで......」


 そういうとメリムはまた眠ってしまった。


「おれも帰るよ! ありがとうトーマ!」


 そう町の人は帰っていった。


「倒せてたのか...... まあ、よかっ......た」


 ほっとすると急な睡魔が襲ってきた。


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