第3話
「ここは......」
メリムという少女に、町外れの一軒家につれてこられた。
「私の家、さあはいって!」
(ここで逃げると更に怪しまれるな......)
仕方がなくメリムに招かれ家に入る。
「ちょっと待ってて! あと君何歳?」
お茶をだしてくれると、メリムは家にはいるなり奥の箱をさぐっている。
「......15だけど」
「えっ!? 私と同い年! その身長で...... あっ、ごめん!」
「いやいいよ」
(騒がしいこだな。 かわいいけど......)
「でもそれなら、あっ、あった!」
そういうと取り出した鞘を掲げた。
「それ抜き身でしょ! これ一応はいるはず、母さんが持ってた剣の鞘、抜けたときのために置いていたの!」
そういって椅子に座ると、机に鞘をおいた。
「ああ、ありがとう...... でも」
おれは鞘に剣を入れ、メリムに差し出した。
「ん? なに?」
「いや、おれには必要ないから、君が持っててお母さんの形見なんでしょ」
「だめよ! 神剣は所持者を自分で選ぶの! その剣はトーマを選んだ! 他の人は使いこなせないの」
そうメリムは剣を押し戻してきた。
「でもモンスターを倒すんじゃないの?」
「......そう。 アイアンクラブが現れて漁や山での採取、畑なんかに被害がでてる...... 私がなんとか神剣を使ってやっつけたかったんだ」
そういってメリムは唇をかみ拳を握る。
(なるほど、みんなのためにか...... アイアンクラブ? 鉄のカニ? あっ! 襲ってきたあいつか!)
「おねがい! 私と一緒にアイアンクラブを倒して!」
そう大きな瞳を向けて懇願してきた。
「ええ!? 無理だよ! 剣なんてつかったことないし」
(タコだし...... それにあのカニ扉をぶち抜いたし)
「その剣があれば倒せるはず!」
「この剣が? そういえばなんなの神剣って? ただ宝石の付いた鉄の剣だけど、そういえば軽いな」
「神剣は強大な力を持つ剣よ。【まりょく】で扱える」
「まりょく?」
「まりょくを知らないの? 外国の人? いやそれでも......」
そう首をかしげている。
(ヤバい! ここじゃ常識の範囲なのか! どうしよう? そうだ!)
「ごめん...... おれよく自分のこともわからなくて...... さっき青い大きなカニに襲われたのは覚えてるけど」
「えっ? アイアンクラブに...... もしかしたらそのショックで記憶喪失になったのかも、でもまりょくのことも忘れるなんて......」
「まあ、まあ、それでまりょくってなに?」
「え、ええ、この世界に満ちる力よ。 生物や物質、自然に含まれているの、それを操ることで...... まあ見た方が早いね」
そういうと机の上に両手を出して目をつぶる。
「あっ!」
両手の上に揺らめく光がうかぶ。
「これが魔力よ」
揺らめいていた光が消えた。
「あっ! だめ...... 私、あんまり魔力を扱うのが上手じゃなくて」
「いや、すごいよ!!」
「え、ええ、それで神剣に込められた強い魔力が使えるはずなのよ」
おれは鞘から抜き剣を見る。
「でもどうやって使うの?」
「それは、扱ったことがないから...... ただすごい魔力よ! その神剣を持ち認められた人を神剣士と呼ぶの。 神剣士たちはその力で様々な偉業をなした英雄たちなの!」
机にのりだし、興奮気味にメリムははなした。
(だから、この剣を抜こうとしたのか...... それに神剣士たち、複数いるんだな)
「だからお願い! 私と一緒に戦って!」
(どうするか? あんな化け物と戦えるとは思わないけど、このままだと確実にこの子だけでいってしまいそうだな。 さすがにほっぽって逃げるわけにはいかないか......)
「あっ! なんか草原に弓とか剣とかもってる人たちがいたよ! あの人たちに頼もう」
「あれは傭兵...... お金をふっかけてくるの。 それにあの程度でとてもモンスター戦えると思えないわ」
そう落ち込んでいった。
(一応、話しはしたのか...... まあ、おれを取り逃がすぐらいだからたいした力はないだろうな。 仕方ない)
「と、とりあえず、この剣を操れたらってことでいい?」
「ええ! それを操れないと勝てないものね!」
なんとかメリムを説得した。
(無理だとわかれば諦めるかもしれない......)
「じゃあ、明日から早速魔力の練習よ!」
その日は、メリムに食事をご馳走して泊めてもらった。
(いったいどうなるんだろう? そういえば、メリムは一人なのかな...... いやよこしまな考えなんてないから! まあタコだし......)
そうベッドで考える。
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