第8話夏の訪れ

六月の雨が過ぎ






強い日差しが

夏の訪れを告げる頃






真っ暗闇な地の下より

光を求めて

蝉達が這い上がってくる






そして切ない声で鳴くのだ






無駄に生きるな


無駄に生きるな






彼らはきっと

知っているのだ






六年越しの暗闇から

解放され






夢にまで見た陽の光を

浴びていられる

残りの時間を






だから

必死になって鳴くのだ






無駄に生きるな


無駄に生きるな






人がその一生を

終えようとする時






その歴史が

走馬灯のように

巡り廻るという






大好きな家族の笑顔






大好きな仲間達の笑顔






そして夕日に染まった

大好きな故郷の風景






今はあなたのその

両手いっぱいの印画紙にたくさん焼き付けるといい






何枚でも


何枚でも






また今年も

夏がやってくる






あなたにも

あの声が聞こえるだろう






無駄に生きるな


無駄に生きるな


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