第9話冬の空気

冬になると






いつもは存在感の薄い

空気が主張をはじめる






深呼吸をすれば






鼻がすっとする程の

冷たさを感じ






テレビを観れば






野外中継の

お天気キャスターの

息は白い






おはようと






寝ぼけ眼で

僕に声を掛ける

君の息も白い






そう






世界は

この空気を媒体に

繋がっているんだ






もしも

電波に色が付いていたなら






遠い田舎から娘を気遣う母親の優しい言葉や






恋人達の甘い語らいが






この広い空を

行き交っているのが

わかるだろう






夜になれば

クリスマスの

イルミネーションで






冬の空気は

色鮮やかに輝きだし






家の前では






夕飯の

温かいシチューの匂いがほのかに漂ってくる






冬の空気が

主張をはじめる






君の息も白くなる


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