第10話独りぼっちが好きになった人

「おはよ!ハルトくん!」


「あ、おはよー!」


「んで、今日はどこ行くのー?」


今日、今日はいよいよ、初めてのでーと...!!!最高!!!


邪魔者もいない。勝ちだね


「あ、えっとね、今日はー。スイーツ巡りしよう!」


「え!ほんと?嬉しい!」


落ち着け、落ち着け俺!


心臓の音が段々とでかくなっていった


「行こ行こ!何食べよっ?」


「あ、てかその前にごめん、ちょっと気になったんだけどさ。」

「んー?」

「何か、柚乃ちゃんさ、変わった?」


「なにがー?」


この前の大学で俺は奈古に柚乃のことを聞いてみた。そうすると奈古はやたら自身ありげに俺に話してきた


「柚乃はねー。特に変わってないってw残念w」


「うっせえ、これから変えんだよ」


「いや、どうせ無理だってw諦めなよwあんなに陽キャの子がお前みたいやつを好きになるわけないじゃん」


「わかんねえよ。少なくとも俺が告白してその返事をもらうまでは絶対に諦めない」


「ふーん...」


「それで、今度遊ぶ場所ってどこ?」


「え、お前。何で俺が今度柚乃と遊ぶって知ってんの」


「あっ!それは柚乃から、聞、違う!心を読んだ!」


「ほーん、」


「あのさ、柚乃ちゃんさ、奈古ちゃんと俺のこと何回か話してる?」


「あーまあ。まあまあ?」


「だから、なのかな?柚乃ちゃんなんか、連絡先交換した頃くらいから表情が柔らかくなったっていうか、親しくなったよね」


「あーそういうことね!まあ確かに」


「俺はまだちょっと緊張してるけど...」


「そうなんだ。じゃあ今日いっぱいおいしいもの食べたら緊張ほどけるかな?」


「あ、うん。たぶん!」


優しい。あいつとは大違いだなぁ。


「じゃあまずは、あ、ていうかお腹減ったしブリトーでも、食べよっか!」


「いいね!美味しそう!」


俺は緊張で心臓がはち切れそうになりながらも次から次へと店をまわった


気付くと、集合時間から2時間も時計は進んでいた


「このコーヒーめちゃくちゃ美味しいね!」


「あ、うんそうだね!」


「ねえハルトくん!」


「あ、なに?」


「ハルトくんってすごい優しいね!」


「えっあ、そう?ありがとう」


「ほら、このコーヒーだって、まだ大学生なのに奢ろうとしてくれるじゃん?」


「それは別に...」


「いや、ほら、バイト大変だと思うしさ。」


おいおい!これ思った以上に手応えあり!


「ねえ、ハルトくん。」


「なに?」


「私ね、実は最近悩んでることがあって。」


「え?まじか。じゃあ俺でいいんだったら相談して」


「でも、いいのかなぁ...これを言っちゃったら。奈古に悪いから...」


あいつが関わってるのか──────


「わかった、無理に言わなくていいよ。いつか話せるようになった時に話して」


「うん。」




お昼時なのに俺は真面目に、次の授業の予習をするために自分の部屋の机に座っていた


「ん、着信音」


近くのベットに置いてあるスマホが鳴った


「もしもし。」


「奈古か、どうした?」


「ごめん。吉田、急に電話して」


「別にいいよ。」


「ずっと言いたかったんだけど、この前はごめんね。」

「私、焦っちゃって。」


「ああ、気にしてないよ。」


「ならいいけど...でも、それだけじゃないんだ」


「え、ほかになんかあったっけ」


「ごめんね。私、明日...大学で釜崎くんに告白することにした」

「•••そうなんだ。」


俺の声は段々と震えていく。


スマホを片手で耳に当てながら目で机にある写真を見ていた


スマホですらベットに置いたのに。集中するために勉強に関係ないものは机の上には置かないようにしてるのに。


なのにどうしてか、まだこの写真だけは片付けられない


中学校の時の奈古と撮った、思い出の写真


連絡がつかなくなっても必ずまた会えるってそう、信じていたから、俺はこの写真だけは片付けられなかった


「だからね、私。ごめんじゃなくて。ありがとうって言いたい。本当にありがとう」


「そんな...俺はなんもしてない」


「したじゃん!いっぱい助けてくれたじゃん。ずっと独りぼっちだった私に何回も話しかけてくれたじゃん!私...ずっと話した内容まで...話してくれたことまで全部覚えてる」


「でも、ごめん...もう戻れないや。本当にごめん」


「奈古、また謝ってるよ。」


「あ、ありがとう!じゃあね、そろそろ切るね、」


「あ、待って!」

「うん。どうしたの?」


もう、好きって言えないけど、せめて、



「この前あげてたさ、カラオケに行ってたんだっけ。その時のストーリー、少し化粧薄くなってたよね。」


「え...」


「まるで、昔の奈古を見てるみたいですっごい可愛かったよ!」


昔...たった数年前なのに


「あ、りがとう。」


泣いている声が電話の向こうで聞こえた


「頑張れよ!絶対大丈夫だから!全部伝えてきてね!」


「うん...バイバイ」


電話が切れた


俺は、机に置いてあったノートの上に顔を乗せて呟いた


「ずっと好きだよ...奈古」

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