第9話頑張って作った友達なのに
私に足りないものはなんだろう
あの子と私は何が違うのだろう
頑張ってるのに...頑張って真似もしたくないやつらの真似をしてるのに
どうして?─────────
「おっはー!」
「わ!びっくりした」
「驚かさないでよー」
柚乃は待っていた私の後ろから驚かそうと声を出して派手に登場した
「ごめんごめん、待った?」
「ぜんぜん」
「よかった。じゃあ、早速カラオケ行っちゃう?」
「行っちゃう!」
私たちは集合場所から目視できるほど近いカラオケに走っていった
「はあはあ」
息が早くなりながら、カラオケの部屋に入った
「あ、奈古」
「なに?」
「ドリンク私が持ってくるよ!」
そう柚乃が言ったのは私が立ったのを見てすぐだった
「あ、いいの?ありがとう。メロンジュース飲みたい」
「わかった!」
柚乃は、そう言いながらドアを閉じた
部屋はなんの音も立たない、まるでそこがカラオケじゃないと思わせるほどに静かだった
だが、私が当然何もしていないわけではない。私はただ、ずっと妄想をしていた。するつもりはない...はずなのに─────
「どうしよ。どうしよ。どうやって聞こう。柚乃にどうやって聞こう」
私は今日しかないと思っていた、いや。というより、今日が最後のチャンス。
「柚乃に...釜崎くんのことどう思ってるか聞かないと、」
「じゃないとこれ以上嘘は思いつかないよ...それに、つきたくないし。」
私が焦ってるのにはもちろん、理由があった。
「ここで聞かなきゃ、もう話題がなくなる。」
「もう、会えなくなっちゃう」
ガチャッ
「あ!ありがと!」
私は急いで顔を変えた
「ほら見て!私もメロンジュースにしちゃった!」
「ほんとだ!」
なんて反応するのが正解かわからないから、とりあえずどうにでもなりそうな言葉を放った。
「てかあれなんだね、まだ歌ってなかったんだ」
「あ、まあうん。」
「よしー、じゃあ歌っちゃうよ!」
「ああ、うん!」
私は家で何回も聴いて覚えてきた最近流行ってる曲を歌いまくった
1時間、2時間...
「あ、もうあと30分か!」
「そだね」
「じゃあ、次はっと...」
後、30分。この言葉に焦りを感じた私は気付くと釜崎くんの名前を口にしていた
「ねえ。柚乃?」
「ん?どしたの?」
「釜崎くんのこと...」
「あ!てか思い出した!釜崎くんにルーズリーフ貸してもらった授業の後のこと、ちゃんと謝った?」
「あ、あれは、」
あの時、私は気付くと周りにいる友達を連れて釜崎くんに話しかけていた。
その会話の中で私は釜崎くんに色々失礼なことを言ってしまった
それもはっきり、何を言ったか、全て覚えている。
でも、私は全てあの時の、あの陽キャの真似をした、そう心の中で言い訳をしていたのだ
「あ、謝った!」
嘘だけど...
「ああ、ならいいけどさ」
「それで、なんだっけ?なんか言いたかったよね、ごめんね遮って」
「私さ...」
今、言うべきこと、それは、それは。柚乃に聞きたいこと、それは。
「私、釜崎くんのこと好きになっちゃった」
違う!違う!何言ってんだよ私
「え?」
「だから、私何回も釜崎くんのこと話題に出してたんだよ。ねえ、聞かせて。」
「柚乃は釜崎くんのことどう思う?」
「え、どう思うって...まだ知り合って数日しか経ってないよ?なのに、私がどう思うとか」
「違う、それでも気になる、私は、聞きたい」
私はこんなんじゃないのに...
これじゃあまるで
釜崎くんと同じじゃん...
「じゃあ...普通?とか?」
「あっ、でも、」
「え?」
「この前、一緒に遊ぼって誘われたって言ったじゃん?あれは空いてたから行くことにした」
「そうなんだ。」
「なんか、ごめんね。何回もこんなこと聞いて。」
「いいよ全然!」
私は安堵して、段々と落ち着きを取り戻していった
「よし!じゃあ次はこれ!」
「いいね!」
時計はさっき見た時から5分動いていた
「はあ、疲れたぁ!」
「だね!いっぱい歌った」
「それじゃ、そろそろ出よっか!」
「うん!そだね。」
会計を終えて、カラオケから出ると、柚乃が話を切り出した
「奈古。」
「んー?なにー」
「もしさ、来週、私が釜崎くんを好きになっちゃったら許す?」
「えっ...?それは...」
「そっか!じゃあまあ適当に遊ぶから大丈夫!」
「え、あ。うん。」
「あ、てか私今日夕方からバイトだ!行かないと。」
「あ!オッケー!がんばって!」
「ありがと!」
「んじゃね!」
「ばいばい!」
柚乃はまた目視できるほどの距離にある駅に走っていった
「あ、そういえば、今日いつもより化粧薄めなの気付かれなかったな...」
「にしても、変な気持ち...なんだろ。これ。私が協力するって言ったのにこれで良いのかな」
「どうしよう。私、柚乃のこと嫌いになりそう。」
私は、光が灯り始める街を見ながら、ゆっくりと歩き出した
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